Neo Culture #Journal

Layered Little Press #Journal(旧Neo Culture)

小さすぎる出版社Layered Little Press(旧Neo Culture)

Facts in Blanksー系譜

例えばyakhniという料理がある。

骨付きの肉を煮込み、とれたスープにヨーグルトを加えてさらに煮る、煮込み料理である。

 

 

例えばkormaという料理がある。

乳製品に加えナッツを使用するリッチな煮込みである。肉、肉と野菜、野菜とナッツなど主たる具材は様々である。南インドに存在するkurmaはこの派生である。

 

 

どちらも北インドの料理であるが、同じ系統の料理は、インドを東端として、

西はギリシャやトルコ、東ヨーロッパに至るまで、

西アジア・中東諸国を挟み、

様々に姿形を変えながら分布している。

 

それもそのはず、この二つの料理のご先祖様はペルシャ出身なのである。

 

 

そしてここでまた1つ疑問を。

果たしてインドで食べられている、yakhniとkormaはカレーなのであろうか。

 

では南インドのkurmaはカレーなのであろうか。

 

ではインドではその3つはカレーだったとして、

 パキスタンに存在するyakhniとkormaはカレーなのであろうか。

 

トルコに存在するyahniとkavrumaは?

ペルシャに存在するyakniとkormaの原型は?

 

トルコのyahniとインドのyakhniではほとんどレシピが変わらないものも存在する。

(トルコの場合は存在した、になるかもしれないが。)

 ではインドのyakhniはカレーなので、

トルコのyahniはトルコのカレーなのか。

 

うるさい。

 

そろそろうるさいと言われそうである。

 

 

ただ個人的にはとても大事なことと思っている。

 

なぜか。

 

インド国外にルーツを持つ料理は、

インド国内にルーツを持つ料理とは根本的に料理としての組み立てられ方が違うからである。(インド国内で見てもいろんな料理としての系譜が存在する)

 

もちろん、

長い年月を経てインド仕様にアレンジされてはいるものの。

 

それが食べられているコミュニティーの宗教、

使用する調理器具、

玉ねぎの炒め方、

にんにくと生姜のバランス、

使用するスパイスの種類とその配合、

トマトの使い方、

主たる素材の火の加え方、

何と一緒に食べるのか、

どういうときに食べるのか、

 

それらはカレーという言葉では掴みきれない。

少なくとも私は掴みきれていない。

 

そしてそれらを理解できれば、

もっと美味しいインド料理が作れるのではないかと

考えるようになった。

 

具体的に言うと、

ヒンドゥー教徒の解釈でイスラム教徒の料理は美味しく作れないし、

その逆もまた然りである、なのではないかということでもある。

 

これは非常に壮大なテーマであり、

だからこそ逆にとりあえず、カレー、というようなあまりにも多様なものを一般化する言葉が必要だったのだろうと感じる。

 

しかしながら、

カレーを突き詰めながらも、そこにに行き詰まりを感じたとすれば、

それはカレーという便利な言葉を捨て去らなければ、

もうそれ以上先には進めないのかもしれないとさえ思う。

Facts in Blanks-例外からのアプローチ。

突然ですが、私の素材と玉ねぎの炒め具合の関係性です。

 

[野菜]

基本玉ねぎは透明、ごく限られたレシピでのみ丁寧なあめ色に炒める。

 

[豆]

基本少し強めの火で玉ねぎの縁をきつね色にする程度に炒める。南系の場合は基本透明。

 

[パニール]

少し強めの火で玉ねぎの縁をきつね色~あめ色未満。

 

[チキン]

レシピによるがあめ色にすることはまれ。

 

[ポーク]

レシピによってボイルドオニオンペーストもしくは玉ねぎの縁を若干焦がすように深く炒める。サグのスタイルやドライタイプのカレーの場合はちょっと色着く程度にしか炒めないことも。

 

[ビーフ]

個人的にはスタイルに関わらず丁寧にあめ色に炒めたい。

 

[ラム・マトン]

レシピにもよるが基本的にはきつね色以上の炒め具合の玉ねぎで。サグに関してもあめ色玉ねぎにする場合あり。ただし、ごく一部のレシピでは透明程度にしか炒めない。

 

 

色々書きましたが、

非常にざっくりとまとめると、

 

あっさり系の食材には軽く炒めた玉ねぎを、

重たい食材にはしっかり炒めた玉ねぎを、

 

っていう感じです。

 

 

しかし、なんでしょうか。

この例外。

 

特にマトンカレーの、ごく一部のレシピでは透明にしか炒めない。

 

僕も今まであまり深く考えたことはありませんでしたが、かなり不思議な感じです。

 

あめ色に炒めない、というのはあめ色に炒めてもいいけど、透明にしておく、

のではなく、

あめ色に炒めると美味しくないので、透明で止めておく(炒めが深くなるにつれて美味しくなくなる)

という意味です。

 

というわけでそれぞれの料理を突き詰めて見てみました。

 

どこの、

だれが(宗教や人種)、

いつ、もしくはどういった状況で、

何と食べるのか(主食は何か)。

 

結果、大体のマトンカレーはあめ色玉ねぎで美味しく作れるものの、

 

少なくともインド北部ムスリムスタイルの食堂やおうちで食べられるようなマトンカレーでは、

あめ色玉ねぎが実は適していない場合があるようだという結論に至りました。

実際にインド人に聞いて「透明よりちょっと炒めたくらいがこのマトンカレーは一番おいしい」と現物を食べさしてもらえたものもあります。(それはパンジャブ地方のおうちマトンカレー)

あとカシミール地方の古典的なマトンローガンジョシュはあめ色の玉ねぎでは美味しく作れませんでした。

(美味しくない、というと伝わりやすいですが、焦点がぼやけるのでここで詳細な解説を。

あめ色に炒められた玉ねぎの味や香りが明らかに食材やスパイスと調和しておらず、カレー全体を乱して不協和音を奏でている感じ。)

 

これは恐らく料理のルーツに関係していて、

例えばマトンローガンジョシュひとつとっても、

特にカシミール地方において古典的な手法で作られるものは、料理の組み立てそのものが「インドの一般的なマトンカレー」と根本的に異なります。

その料理の組み立ての差が、素材と玉ねぎの炒め具合の相性に影響しているのではないかと考えています。

 

しかしこれもまた、

カレーという便利な言葉を用いて、

インドの料理を語る際の副作用である。

 

例えば、マトンカレーはあめ色玉ねぎで美味しく作れるとしたときに、

 

今、古典的なマトンローガンジョシュはあめ色玉ねぎで美味しく作れないという例外的な事象が生じた。

 

マトンローガンジョシュを見たときに皆一様にカレーであると感じるであろうが、(インドの食べ物だし)

もともと地理的にインドでもないこの地域の料理にカレーという言葉のもつ定義が当てはまるのであろうか。

カレーと言ってしまっても、作り方はカレーとは異なる。

 

ではそれは例外なのか。

このカレーは例外的な手法によって作られるカレーです。

 

果たしてそれはカレーなのか。

カレー以外の何かではなく、カレーの例外なのか。

 

我々が本当に美味しいインドの食べ物を作れるようになるためには、

まずカレーという言葉を捨てるところから始めなければならないのかもしれない。

 

Facts in Blanksーカレー作りの必須スパイスというもの

単語というものは極論、

中は空っぽの箱のようなものであり、

それ自体に固定された意味はなく、

話し手が聞き手に伝えたいと思う概念の意味するところをその単語という箱の中に入れて初めて、

意味を持つ。

 

とある言語学者がそんなようなことを言っていた。

 

 

 

カレー作りに必要なスパイスは、

実はわずか2種類である。

ターメリックとカイエンペッパーパウダーの2種類で、ターメリックもパウダーなので、

この考え方においては、固形状のホールスパイスと言われるものはカレー作りに必須ではない。

 

また、この2種類にパプリカパウダーを加え3種類のパウダースパイスがカレー作りには必須であると言っている人もいる。

 

しかし、

パプリカもカイエンペッパーも広い意味で唐辛子系の植物の実の部分の乾燥粉末と思えば、辛味の度合いはとりあえず置いといて、

とりあえずターメリックと唐辛子系の植物の実の乾燥粉末の2種類のパウダースパイスがあれば

カレーが作れる、そう言うことになる。

 

 

しかしそういう話をすると、

「インドにはターメリックを使わないカレーもある」

という話が出てくる。

 

「だっていろんな本に書いてあるけど、

ターメリックって着色でしょ?」

次に言われることがこれ。

 

まず、ターメリックの働きに関していうと、

はっきりと味も香りもある。

それも結構強い。

着色の作用しかないというのは、間違いです。

これは持論でもなんでもなく、

実際にターメリックがそういうやつなので、誰が何をどう言ってもしょうがない。

揺るがない事実です。

でもこれに関しては本題ではないのでここまで。

 

 

本題は「ターメリックを使わないカレーとは何か」

である。

これに関しては明確な答えはない。

 

しかしひとつ言えることがある。

インド人は自らの料理に対してカレーという言葉を本来的に使っていない。

我々外国人がカレーという便利な言葉を使って

インド料理の再定義を行っているだけである。

それも勝手に。

 

インド人は自分達の料理をカレーとかカリーとか言ってるし、

インドの食堂やレストランのメニューにもカレーという言葉が使われている。

 

確かにそうですね。

でもほとんどの場合英語で、ですね。

昔から壁に直接書かれている現地語の中にカレー、もしくはカリーという単語はあるのでしょうか?

無いわけではない。

 

日本には醤油を使った料理が星の数ほど存在しますが、

名称はどうなっていますか?

佃煮、肉じゃが、土佐煮 etc

 

ではサブジはカレーですか?

バジはカレーですか?

マサラはカレーですか?

コルマは?

ラッサムは?

ジョールは?

 

上記のメニューの中では一部ターメリックを使わないバリエーションをもつ料理が存在します。

 

じゃあカレーじゃないですか?

それでもカレーですか?

カレーの中でもターメリックを使わない、

例外的な存在ですか?

 

言語学的アプローチによって考察すれば、

その議論自体には何の意味もなく、

そもそも本来的にカレーではないものを

内なる構造を全く無視しカレーという言葉を使って

勝手な再定義を行ったために、

その副作用としてこのような議論をする余地が生まれてきてしまったと、

そう考えることができます。

 

 

 

 

昭和のハムカツ

どうも、

 

胃潰瘍です。

 

「救急車で運ばれる価値のある胃潰瘍

 

とお医者様に褒められるほどの胃潰瘍だったらしいですが、

 

36時間たった今、

生○ビールを決めてます。

平気です。

 

ご心配をお掛けした皆様、

またお仕事日程調整かと余計な心配をお掛けしてしまった皆様、

 

大変お騒がせいたしました。

今朝の仕事は30分遅れでしたが、

午後より平常運転です。

 

これからもよろしくお願いいたします。

 

 

さて、今日は昭和のハムカツのお話です。

 

 

今日のお仕事でハムカツのパン粉付けをすることになりました。

 

見本を見せてもらうと

 

ずいぶんと衣の薄いハムカツが。

 

 

僕の知っているハムカツと言えば衣の厚さがハムと同じくらいか、ハムより厚いものばかり。

 

それがハムカツと思っておりましたゆえ、

 

なんだか貧相なハムカツと

 

そう思ってしまったのです。

 

 

しかし、

ここでそのハムカツが未だに存在するということは、

きっと何かしらの理由があるはず。

 

というわけで聞いてみた。

 

 

「うちはね、ハムカツのパン粉付けは手作業なんだよ。出来合いのもあるんだけどね。」

 

「衣って結構薄いんですね?」

 

「昭和のハムカツを再現したんだよ。懐かしくなるようなね。

ハムが薄いから衣が厚いと、脂っこくなるって言うのもあるけど。」

 

「昭和のハムカツって衣薄かったんですか?

僕は分厚い衣のやつしか知りませんでした。」

 

「今はそうだね。

でも昔はこんなんだったんだよ。町の肉屋さんで売っててね。」

 

「だからハムにどろをつけた後はこうやって余分などろを落とすのさ。」

 

「へえ、勉強になります。」

 

「勉強になるなんてもんじゃないよ。

でも昔は町のお肉屋さんでこういうのがあったんだ。」

 

「後はイカフライだね。

ハムカツは少し高かったんだ。

イカリングがフライになったやつは安くてね。店先に醤油がおいてあってそれで食べたんだ。

 

でも皮がひいてなくてさw

食べると皮がびーんって伸びるんだよね。」

 

「へー、僕も今引っ越しちゃったんですけど、前までこのすぐ近くに住んでまして、ほんと近くに町のお肉屋さんがったんですよ。

すごい好きでコロッケとかメンチカツとかよく買って食べてました。」

 

「コロッケもね、昔はお肉が貴重品だったからさ。」

 

「そこも、申し訳程度のお肉ですね。」

 

「そう、それとジャガイモの皮をちょっと入れるの。そうするとそれがお肉に見えるんだよね。」

 

「...!!!!!」

 

「昔はあそこのコロッケが美味しいとかなると、みんなでそっちに買いに行ったもんだよ。」

 

「そうなんですね。」

 

「スーパーができ始めたらどんどんなくなっていっちゃったけどね。」

 

「僕あそこのお肉屋さんが好きでコンビニとかじゃあ満足できないんですよね~。」

 

「でもまあ良い悪いじゃないよね。自分もスーパーで買っちゃうしさ。」

 

「後はお肉屋さんって揚げ物にラード使うからさ。あれが美味しいんだよね。」

 

「あー、わかります。美味しいですよねえ。」

 

「でも全部ラードじゃないんだよ?」

 

「あ、言われてみればそうですよね。」

 

「全部ラードでやると揚げたときに黒くなっちゃうからね。あと重たすぎる。

 

そこの配合はそれぞれのお肉屋さんであるんだよ。」

 

「それで、」

 

「そう、だからあそこは美味しいとかっていう話になるんだよね。」

 

 

 

生き神様より

古き良き時代の貴重なお話を伺えました。

 

確かに良い悪いではないけど、

食に関しての古き良きを語り継いでいくのは我々の使命かもしれん。

 

 

会話において私が防戦一方でろくな返しができておらんのは、そう、

亀の甲より年の功ということです。

 

若造は要らんことしゃべらんとじっくり聞くべしなのです。

 

次からハムカツ作るときは昭和スタイルでやります。

 

新世紀ラグマンProject. Episode-FINAL

前回までのあらすじ

現代日本にラグマンをほぼ完全に再現しようとする試み、

新世紀ラグマンProjectを成功させるべく奮闘中のTommo Sogabe。

ひとまず次の目標は2/27一日復活 大岩食堂旅のアジアご飯  シルクロード特別篇!

しかしラグマンの麺をどう再現するのか悩み続け、

一時は妥協して乾麺を使用するか、いっそ止めるか、みたいな危機的な状況であったが、Dという一人の料理人がその状況の打開策を見出した。

Dは、彼がレストランで使用しているイタリアの生麺パスタ トンナレッリ・ロマーナは、ラグマンの麺に近しいのではないかというのである。

 

そこから、話は大きな展開を迎える。

 

その麺は浅草にあり

Dによると、彼はトンナレッリ・ロマーナ(太麺)は浅草に所在する開化楼という製麺所から仕入れているという。トンナレッリ(中太麺)に関しては普段は使っていないものの、試作の為に仕入れたらしい。

浅草開化楼といえばラーメン業界でかなり有名な製麺所である。

 

最後の難関

今回の2/27の旅のアジアご飯の為に、私はこの麺を開化楼さまに売っていただく。

それが今回のProjectの最重要ミッションとなった。

それには直接製麺所へ行って、直談判するしかなかった。

しかし、なんせ相手は天下の開化楼さま。

果たしてこんな個人が相手にしてもらえるのか。不安である。

しかしありがたいことに、そのとっかかりとなるやり取りや、アポイントメントの作成はDが行ってくれた。

今回は、カラスさんという方と話をして、認めていただく必要があるとのことだった。

Dのスマートなアシストによって、日程調整もスムーズに進み、見学の日はすぐに決まった。

こんなこわっぱが工場見学と直談判のチャンスをいただけたのである。

 

武器は情熱

相手は製麺のプロ。

であれば麺に対する情熱は半端じゃないはずである。

ならばこちらもラグマンに対する情熱と、

「ラグマンの麺にはトンナレッリがいいんです!!!!」という情熱をぶつければ、

もしかしたらイケるんじゃないか、

などとどうしょうもないことを考えては不安を紛らわしていた。

しかし、情熱を武器に戦う以外に選択肢はなかった。

なんせ、麺に関して私は全くの素人である。

プロを相手に理屈をこねくり回しても、所詮素人は素人。

相手には「で?」と思わせてしまうだけであろう。 

 

I DO What I Do

ならば後はやることをやるだけである。

何はともあれ試作である。

トンナレッリを使ってラグマンをほぼ完全に再現することができ、

それがきちっと美味しければ、きっと開化楼さまとの交渉の材料となろう。

 

試作にはDが協力をしてくれた。

彼が店で使っているソースの中に、自家製皮なしソーセージを使って作る、

フラタッキオーネというパスタソースがある。

ソーセージと言っても皮なしでやるので、簡単に言うと味の入ったひき肉を加熱して作るような感じ。

このフラタッキオーネソースに、ウイグル自治区のラグマンにはほぼ必須な食材、生トマトを加え、ラグマンの具に仕立てる。

そして、茹でたトンナレッリ(中太麺)にそのソースをのせる。

これがそのラグマン風のトンナレッリである↓

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そしてこれが今回モデルとしたラグマン↓

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なんならモデルより再現の方が美味しそうやし。

 

しかし麺の伝播に関しては色んな説がありまして、

ラグマンが西に伝わりパスタになったとか、

その逆でパスタがラグマンのルーツだとか、

漢民族ウイグル人にラグマンのもととなる料理を伝えたとか、

まあ、しかし実際そんなことは素人にはよく分からないというのが正直なところだし(何を信じるかは別として)、

ただ今回、新疆ウイグル自治区に行き、イタリアやそっちの方との古の時代の文化の交流というのも感じてきた。

例えばこれ↓

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ラムひき肉の包み焼でタンドール様の窯で炭火で焼くのだが、完全に見た目はイタリアのカルツォーネである。

まあ同時多発的に同様の形状の料理ができたのかもしれませんけど、

そんなことより、古の時代の中国とイタリアの文化の交流、それを想像する方がはるかにロマンチックで夢があって楽しい。

少なくとも自分はそうである。

 

そして今回、実はラグマンは生のうどんを使えば別にそれでよかったのかもしれない(実際、稲庭うどんとかかなり近いと思う。

が、しかし!!!!!

トンナレッリが遥か遠くイタリアから日本にやって来て浅草で作られていて、

そしてそれはもしかしたらラグマンのご先祖様なのか、ラグマンのご子息なのか知らないが、

そんなトンナレッリでラグマンを現代日本で再現する、

この時空を超えた巡り合いによってもたらされる一種のドラマのような再現ができれば、

私はそちらの方がはるかに萌えるのである。

 

そして、私にとってであるが、

少々のトライアルの結果、うどんよりもトンナレッリの方が、

より近しいラグマンを再現できるという結論に至った。(感覚的ですけど)

そしてそうやって作られたラグマンは、食べ手をもわくわくさせてくれるだろう。(と思っている。)

蛇足ではあるが、他にも新疆ウイグル自治区で食べた平細麺の麺料理を再現したが、日本のラーメンの麺よりも生のリングイネを使用した方が、

より現地っぽく仕上がるという、これもまた感覚的ではあるが、一つの結論を得ている。

 

決戦前夜

やれることはやった。

こんな日は早く寝るに限る。

 

決戦

早朝に浅草開化楼へ。

決戦にはDも同行してくれた。

 

製麺所の朝は早い。

それはまあそうだろう。毎日のランチタイムに間に合わせるべく、

麺を作っているのであろうし。

それで私たちの胃袋が支えられていると思うと、頭が上がらない。

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朝、7時半、

作業はどピークでこの時間が一番大変とのことだった。

しかしそんな中、スタッフの皆さんは、全くそんなことを感じさせず、

突然の来訪にも関わらず、ものすごく丁寧に対応してくださった。

 

 

そして、ついに、カラスさんとの面会である。

忙しい中、どうもありがとうございます。

 

名刺交換をする。

 

不死鳥、、、カラス、、、

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「カラスさん、プロレスラー、やってらしたんですね。。。!」

 

交渉

特に込み入った話にはならなかった。

と、思う。。。

正直、緊張していたのか

何をどれだけ話したのかあまり覚えていない。

ただ、断片的な記憶を辿ると前々項のI DO What I DOに書き記したようなことを

話した、気がする。

 

しかしとにかく結果として、2/27 大岩食堂 旅のアジアご飯 シルクロード特別編でのトンナレッリの使用許可はいただけた。

 

これできっとほぼ現地完全再現、最高のラグマンがお出しできます!!

 

2/27のラグマン

当日は3種類のラグマンをご用意する予定です。

1つはトンナレッリ・ロマーナ(太麺)使用のラム肉のラグマン-过油肉拌麺

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过油は油通しや素揚げという意味で、肉や野菜を油通しして、ラム出汁、トマト、醤油のスープに合わせ、具とする。

新疆ウイグル自治区ではかなりメジャーなラグマン。

 

2つ目はトンナレッリ・ロマーナ(太麺)使用のラム肉とニラのラグマン

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店によって具材の取り揃えは違うけど、イメージ的には1つ目のラグマンに大量のニラを加える感じです。ニラとトマト、日本ではあまり馴染みのない組み合わせですが、愛称は◎。ニラ好きにはたまらない中毒性抜群の一皿です。

 

3つ目はトンナレッリ(中太麺)使用の・牛肉のラグマン-牛肉拌麺。

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さっきの試作のモデルになったラグマン。

ボロネーゼのソースを連想させる力強い牛挽き肉とトマトのソースで食べるラグマン。こちらはちょっとマニアックなラグマンですね。

 

 一日復活 大岩食堂 旅のアジアご飯 シルクロード特別編

2/27(月)

ランチ 11:30-14:00

ディナー18:00-23:00

 

<お品書き>
・黄燜鶏米飯(イスラム風鶏の中国醤油煮)
・ラム肉のラグマン-过油肉拌麺
*低加水パスタフレスカ(生麺) トンナレッリ・ロマーナ(太麺)使用

*ラム肉とニラのラグマン

*低加水パスタフレスカ(生麺) トンナレッリ・ロマーナ(太麺)使用

・牛肉のラグマン-牛肉拌麺
*低加水パスタフレスカ(生麺) トンナレッリ(中太麺)使用

 

・ラム肉のクミン焼き
・大根ともやしの醤油焼き

トルファン特産干し葡萄&ナッツ


トルファン産ワイン赤・白
・ハーミー特産メロン、ハーミー瓜牛乳

 

お待ちしております!!

よろしくお願いいたします!

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ご協力くださいました皆様!!

本当にありがとうございます!

新世紀ラグマンProject. Episode-1

2016.12.31-2017.1/19 

中国・新疆ウイグル自治区

そこで私は

ラグマンを

食べた。

 

新世紀ラグマンProjectとは、

その新疆ウイグル自治区で食べたラグマンを

現代日本でできるだけ完全に再現しようとする試みである。

 

 

 

そもそもラグマンとは? 

うどん

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のような麺類で、麺自体は小麦粉と塩、水だけで練る。

 

太さ的には色々あるが細いもので稲庭うどんくらい(もっと細いのもあるかも)

写真のものを見ても本当にうどんっぽいが、

現地で食べた限りでは平均的に一般的なうどんよりもずいぶんもちもちしていた。

 

 

 

拉麺vs切麺

ラグマンは中国語では拌麺という。

拌、つまり和える。拌麺、そう、つまり和える麺、それは和え麺。

 

もう一つ、中国の小麦麺料理は非常にざっくり分けて2種類に大別できるそうである。

拉麺と切麺である。

 

拉麺とは拉する麺、つまり手で引っ張って伸ばす麺。

そして切麺とは、現代の日本のそばやうどんのように綿棒で延ばし、刃物で切り出す麺。

 

なので拌麺は拉麺であり、

しかし日本のラーメンは拉麺ではなく切麺である。昔はどうだか知りませんがとりあえず今は手で伸ばしてないので。

 

 

22017/2/27 1日復活!!大岩食堂 月曜日旅のアジアご飯 シルクロード特別篇!!

帰国してからというもの、Tour  Neo Culture シルクロード大巡礼祭りと称して、

東京のあちこちでシルクロード関連のイベントを連発しております。

関係者様、ご協力いただいている皆様、本当にありがとうございます!

 

そして去年の10月に最終回となりましたが、大岩食堂旅のアジアご飯という、

自分が旅をしてきた各地で食べた料理をお出しするという、週一のイベントをやらせていただいておりました。

 

それが何と2017/2/27に1日復活でシルクロードの料理をお出しできることに!!

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こ、これはもう、

ラグマンをやるしかない!!!!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

 

 

問題その1

しかしながらラグマンを現代日本で再現するにあたって問題が。。。

 

ラグマンの麺の作り方も分からなければ、伸ばし方も分かりませんもので...orz...

 

ラグマンは中国で言うところの拉麺なので、麺を手で伸ばしていくのだが、その麺の延ばし方は拉麺の種類によって様々に違う。

中には小判状に薄く伸ばした生地をただ手で引き延ばすだけで、一本の麺にも太い部分と細い部分とのムラがあっていいような麺も存在し、それならなんとなくできそうな気もしないではないが、、、

 

しかしラグマンの場合は両手で延ばした麺を板に叩きつけて伸ばす、それも均一に。

なんとまあ難しそうな、、、

よほど練習すればできたりするのかもしれないが、

2/27には間に合わないでしょう。

 

実際に見てきたけどこれ↓

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いや、この指と麺の絡まり方なんなんですか!!

俺には無理っぽい!!

 

問題その2

2017/1/29に私は西荻窪にあるそばとワイン 吉さんのご協力のもと、そばとシルクロードというイベントを開催させていただいていました。

そこでもラグマンと馬虎麺をそばで再現するという挑戦を。

 

その時の馬虎麺風そば↓

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粗びき二八の平打ち


実際の馬虎麺↓

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ラグマン風そばの具↓

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モデルにしたラグマン(いろんな種類あるけどこれが一番好きだった)↓
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麺は、、、

写真撮り忘れてましたが細麺です!!

つるつる微粉七三

 

そばはこの日のために店主があれこれ考えてカスタムそばを打ってくれたんです。

ラグマンの具や、馬虎麺のつゆの再現は比較的簡単にできるし、できた。

 

麺に関しては全くの素人の私は今回のそばも、「現地ではこう言う麺だった」という情報を伝え、写真を見せただけで完全にアウトソーシングしていた。

 

このイベントでは結果、

馬虎麺風もラグマン風も

そばはおかげさまで大好評。

本当に吉の店主様さまさまでございました。

 

が、2/27 大岩食堂旅のアジアご飯。

私は一人なのである。

これは大問題である\(゜ロ\)(/ロ゜)/

 

アウトソーシングできる小麦麺のプロフェッショナルも周りにはいないのです。

さて、困った(;´д`)。

 

乾麺は手に入る。

しかし、乾麺はああああーーーーー。。。!!!!!

気が乗らん...orz...

 

1/29 そばとシルクロードでは店主のスペシャルそば(しかも打ち立て)でラグマンを再現したのに対し、

 

来る2/27!!!! ラグマンやります!!!今回は、、、乾麺!!!!!!

 

(;´д`)。。。

 

これではお客さんに感動はおろか満足もしてもらえないだろうと思うのです。

 

1/29の盛況を受けて、いい意味でハードルが上がっていました。。。

 

ラグマン、やっぱ出すのやめるか。。。

うっすらと脳裏にそんな妥協案が浮かびました。

 

そうそう、

だってそもそもラグマン以外にもシルクロードの料理はたくさんあるし、

自分が勝手に現地で食べたラグマンに大はまりして盛り上がっていただけで、

別にそれを2/27にやる必要なんかないじゃないですかー!!!???

 

1/29にもう一回やったんやし。

お客さんにもラグマンなんか実際そんなに求められとらんかもやし。

 

悩みながらも妥協案への道を突き進む俺。

そんな時に、遥か西方の国より

まるで一縷の望みのごとく

一本の救世主が現れたのであった。(実話)

 

続く

新世紀ラグマンProject. Episode-2

前回までのあらすじ

新疆ウイグル自治区でラグマンを食べて以来、

完全にその虜となってしまったTommo Sogabe。

日本に帰国後、現代日本でそのラグマンをほぼ完全に再現しようとするプロジェクト、新世紀ラグマンProect.を立ち上げ(一人でw)、

2/27の一日復活 大岩食堂 旅のアジアご飯 シルクロード特別篇にて、ラグマンのほぼ完全再現を目指すものの、

目の前には様々な問題が立ちはだかっていた。(麺どうしようとかw)

 

しかしそんな中、遥か西方の国より

まるで一縷の希望のごとく、

一本の救世主が姿を現したのであった。(実話)

 

 

 

出会い

時は2017年2月より半年ほど遡り、

2016年夏(確か)。

秋葉原の路地裏でとあるシェフと出会ったのだ。

私は彼のことをDと呼んでいる。

Dの作る料理は繊細で複雑であった。

またDは自分の料理を解説するとき、独特で難解な言葉を使った。

Franceという国の言葉らしい。

ブレゼ、エマンセ、、、等々、覚えきれないし思い出せない。

かろうじて思い出した二つの言葉でさえも、なんとかカタカナで表してみたものの、

これで果たしてあっているのであろうか。

 

 

Italia

Dは現在、Italiaという国の料理を出すレストランにシェフとして在籍している。

私は気が付いたらDの牙城へと飛び込んでいた。

無論、それは私がDの料理について少しでも知識を得たいと思ったからだ。

後々の為になるとか、そんなことはどうでもよく、

ただただ、私の知識欲がそうさせた。 

 

異国の地 

潜り込んだDのその牙城はまるで異国の地だった。

まずFranceと、そのItaliaという国は言葉まで違うのである。

一生懸命覚えたブレゼもエマンセもItaliaでは使わない言葉らしい。

じーざす。

Spainという国の言葉なら自分は少々分かるのだが、

これとも違うのだ。

似ている単語もあるのだが、全部似ているわけでもないし、

違うところも多い。

発音の仕方も違うので、実際の使用の中では似ているのか違うのかすら、

もはやさっぱり分からない。

 

異国の地②

そこには自分がまだ知らない食材が沢山あった。

面白いのはパスタという乾燥させた細長い麺である。

日本のうどんやラーメンとは違い、深いスープに入れて好きな具材を載せ、

丼ですすりながら食べるものではないらしい。

さらにパスタと一口に言っても、日本のうどんの様に様々な形状のものがあり、

それぞれ用途も違うようだった。

 

しかし、そのパスタというもの、例えば太さがほんの0.3mm変わったら呼び方が変わるうえに、

同じ呼び名でもブランドによって多少太さが違うときた。

私にはいちいち使う前に確認するしかなかった。

 

乾麺vs生麺

ある日、Dが一つの麺を紹介してくれた。

トンナレッリ ロマーナ

というらしい。

ロマーナとはItaliaという国のRoma風という意味と教わった。

明らかに他のパスタより太い。

 

しかも、生なのだ。乾麺ではないのだ。

聞けばいわゆる生パスタなるものも普通に存在していると聞くが。

 

Dは私にそのトンナレッリ ロマーナを使って作ったカルボナーラを食べさせてくれた。

カルボナーラのことは知っている、粉チーズと卵黄で作るあの濃厚なやつだ。

 

トンナレッリ ロマーナは他のパスタとは明らかに違い、

歯切れ良くももちっとしていた。

このカルボナーラ自体もうまいが、何よりも麺が美味い。

確かにそう思ったが、

この話はここでいったん終わりである。 

 

新疆ウイグル自治区

そうして私は新疆ウイグル自治区へ渡り、ラグマン三昧の日々。

他にも拉麺などなどいろんな種類の麺料理も存在するのだが、

ウイグル自治区に住まうウイグル人の麺料理と言えば、

ラグマンを置いて他にはないであろう。

ラグマンとはEpisode-1でも触れた、拌麺、和え麺である。

その麺は見た目は稲庭うどんのようであり、しかし食感はそれよりももちもちとしているのである。

冒頭にも触れたとおり、私はすっかりとラグマンの虜であった。

 

帰国後のDとの会話、救世主あらわる

2/27大岩食堂 旅のアジアご飯シルクロード特別編で、私はラグマンを再現したい。

しかし、その解決の糸口は見つからぬまま、少しだけ時間が経ったある日の話。

私はDにラグマンの話をした。

それもかなり詳細に。

現地で撮ってきた写真も見せた。

 

Dは言った。

「ラグマンってそれ、トンナレッリじゃん。」

私は( ゚д゚)ハッ!とした。

「そういえば似ているかも!!!!」

「これはロマーナだから太いけど、これより少し細いのもあるよ。

それなら、ラグマンじゃない?完全に。

かん水とかもむこうじゃあ使わないらしいし、その辺も似てるよね。」

 

改めて、トンナレッリ ロマーナ(太麺)とトンナレッリ(中太麺)を手に取って見てみた。

「いや、どっちの太さくらいのも、現地で食べてきましたね。

確かにこのトンナレッリならトンナレッリ(中太麺)でもロマーナ(太麺)でもどっちにしろいい感じにラグマンを再現できそうです。」

太さだけの話ではない。

 

ラグマンの麺は日本のうどんの様ではあるが、その食感がやはりずいぶん違う。

食感について簡単に例えると、ラグマンの麺はより、白玉団子のようなもちっと感を持つのだ。

そしてトンナレッリにはウイグル自治区で食べてきたラグマンの麺に近い食感がある。歯切れ良くも、もちっとしているのだ。

 

乾麺ではない、

妥協案ではない、

確かな解決策が見つかった気がした。

 

ラグマンの麺として、

うどんではなく乾麺でもなく、Italiaの生麺パスタ トンナレッリを使用するのである。

 

続く