Neo Culture #Journal

Layered Little Press #Journal(旧Neo Culture)

小さすぎる出版社Layered Little Press(旧Neo Culture)

「あの日、ウイグル。」~命拾い編~

一応、33ヶ国周って、それなりに危ないといわれている場所も行ったし、

無茶も冒険もしたけど、犯罪に合ったことは一回もない。インドで一回ちびっこにお金をすられそうになったけど、それだけ。

運もよかったんだろうが、それなりに気を付けている。危険を察知する嗅覚も普通の人より優れていると思う。

っていう話をすると、「はいはい出た中級者~お前みたいなやつが一番危ないんで」って自称上級者に言われたこともあったけど、まあ言わせておこう。

 

現在時刻は16時。

これからウルムチ駅反対側の旧市街地と思しき区域に挑むつもりだ。

危ないかどうかとか全く分からないが、そこに本当のウルムチがあるんなら見ておくべきだし、万が一危なければ引き返せばいい。

日没までなら大丈夫だろう。

 

あのくそ怪しい招待所という名の宿に一回戻って、荷物を整理して、ケータイをWi-Fiに繋いで駅周辺の地図をスクリーンショットしてきた。そうそう、どんだけぼろくても意外にWi-Fiが繋がるのも中国のお宿のいいとこである。

そしてウルムチ駅の東口に戻ってきた。

駅の反対側までどうやって行けるだろうか。ちょっとうろうろしてみたが連絡通路みたいなものは見当たらず、大人しく地図に従って太い道を南側に2㎞ほど下り、道に沿って線路の反対側に行った。これが意外と遠くて、今16時半。

 

ふと見上げると道路の脇の高台に明らかに他の街とは作られた年代が違う建物が。

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っていうか随分ぼろく見えるけどまだ人が使っているんだろうか。

 

前を向くと門があった。これが出入口か。

鍵付きの簡素な門で、住民はここのカギを持っているので出入りができるらしい。

住民はウイグル人と思うけど、そのウイグル人の中でもどんな人たちがここに住んでいるんだろうか。すごいぼろいけど。

中の様子を伺おうにも鍵がかかっているせいで中には入れない。

もしかしたら、同じような区画はまだウルムチの中にいくつか、いやたくさんあるのかもしれない。

昔ながらの街並みを保存していますって雰囲気でもないし、この区画にはどういう意図があるんだろうか。

 

そこからまた西口の旧市街地へ向けて歩き出した。

さらに30分ほど歩いて旧市街地の入り口と思しき場所へ着いた。

 

なるほど、理由は分からないがどうやらこの一帯は再開発(同化)されていない様で、

おそらくこの右の道に進めば旧市街地へ着くのだろう。

この雰囲気、もしかしたらスラム化しているかもしれない。

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右の道のさらに右に細い通路があって、旧市街地の方に入っていく道は下っており、

その細い路地はこの左の太い道路と同じで平行に進んでいた。細い路地に入れば、高いところから旧市街地を見渡せるかもしれない。

治安の情報が全くないので、とりあえず様子見である。

 

さっき、ウルムチ駅の東から30分かけて南へ下り、西へ走る道路に沿って歩いて線路の反対側に渡り、少し北へ向かって歩いたが、ウルムチ駅はまだ全然見えない。で、ここが旧市街地の南端とすると割と大きな旧市街地が南北に広がっていると思われる。

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人の気配は特にない。

しかしそんなに危なくもなさそうである。

危険な気配はない。

 

土手を滑り降りて旧市街地に入った。

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これが昔ながらのウルムチか。

なんというか、ウルムチは極端に古いか新しすぎて中国人の街になってしまっているかでギャップが激しいな。ちょうどいい京都みたいな感じの街並みはないのだろうか。

 

先へ進む。

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治安は本当に問題ないようである。

この辺りは、であるが。

 

振り返ってみた。

屋根が低いな。煙突が出ているということはこれが屋根なんだろうが、

寒いし半分地面を掘るような形で、家が半地下になっているんだろうか。

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日没の時間は気にしていたが、この感じだとまだ余裕そうである。

おそらく明るいうちに旧市街地の北まで歩ききれるだろう。

山とはまた違うが、場所によっては暗くなって治安が急激に悪化する場合もあるし、

道にも迷いやすくなる。迷子になると寒いし普通に死ぬ可能性もあるので、こういう探索は明るいうちに、

自分の位置を見失わないように確実にゆっくり歩を進めていく時間の余裕がなければならない。

 

今通り過ぎた家には人が住んでいたようだが、

それ以外は本当に人の気配がない。

ほぼ廃墟なんだろうか。

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っと思ったら向こうに誰かいるな。

 

少し進んだが、この辺りは普通に人の気配がある。

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あれ、さっき見えたおっさんかな。

 

さらに進む。

あのおっさん見失ったな。

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これは後ろに振り返った視点なので、今自分は南に向いている。

線路が走っている土手の方にくねった路地が伸びている。

そっちに民家があるんだろうが、なんていうか、旧市街地とはいえ、人のプライベートを覗きに行くような気がしてさすがに気が引けた。

先に進む。

 

まだまだ続く旧市街地。

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ここでウイグル人の青年に急に話しかけられた。

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曲がり角から出てきたをところばったりとなった。

訛った英語で話しかけられいくらか話をしようとしたがどうにもかみ合わない。

語学力の問題ではない、彼はおそらくキまっている。

別のウイグル人の青年が来て追い払ってくれたようだが、彼も何も言わずに立ち去ってしまった。

 

さらに北へ。

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道は少し広くなり、市街地から別のエリアに入ったようだ。

治安も悪くないと思う。

ただ、治安が悪くない、というのは治安が良いということとは違う。

悪くない、というのは悪すぎない、ということでしかない。

 

さらに先に進むと開けた場所に出た。

これは西側を向いて撮った写真。

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恐らく、この道をまっすぐ行けば先ほど分かれた太い表の道に出られるだろう。

 

あそこの家の前にはたちんぼがいた。

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もこもこを着込んでいるので正確なことは分からなかったが、おそらくウイグル人ではない。

他にも数人のたちんぼがいた。見な人種はバラバラの様だった。

 

 

さっきの交差点からもう少し北へ行ったところ。

道はさらに北に伸びている。f:id:Neo-Culture-journal:20180511180522j:plain

体感ではあるが、おそらくさっきの交差点が旧市街地の真ん中。

ここからまだ北に向かって旧市街地が広がっているようだ。

行くかどうか、躊躇していると一人のおっさんが横をすり抜けて北へと歩いて行った。

なので後を着いていけば旧市街地の北まで行けて、そこから西に少し歩けば表の太い道路に出られるだろう。

どうするか少し考えた末、ここから先に行くのは止めた。

 

何か危険なニオイがしたわけじゃないが、とにかく直感が制止した。

 

さっきの交差点に戻って西へ、一度表の太い道路に戻ることにした。

この旧市街地一帯が低い場所にあるので、表の通りに戻って北へ登れば、高いところからまた旧市街地が見渡せると思った。もし大丈夫そうならその時にまた旧市街地に下ればいい。

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この辺りには食堂がいくつかあった。この旧市街地の繁華街だろうか。

何を出しているのか分からない怪しそうなお店もいくつかあったが、昼にいろいろ食べすぎてまだお腹が空いていない。

話のネタに何か一品くらいチャレンジしとけばよかったと思う。

 

表へ出たけど、なんかやっぱりこの辺一帯は何かおかしい。

手つかずというか、

放棄された感じすらある。

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他のエリアでは今もどんどん開発が進んでいるというのに、駅至近のこの広大なエリアがそのまんま手つかずというのはきっと何か理由があるはず。

 

。。。治安が悪すぎるとか。。。

 

などと本当かどうかわからないことをいろいろぐるぐると考えながら北へ。

思ったより日が長いのは嬉しい誤算だった。

というかそうか、日の入りの時間の感覚すらないって、

それもそう、今朝ウルムチに着いたばかりだった。

 

ふと、東側、旧市街地の方へ下れそうな道が現れた。

予想通りこちら側は高い位置にあり、旧市街地は低い位置にあった。

この道の先の階段を下れば旧市街地に下れる。

 

余り気が乗らなかったが、とりあえず覗くだけ覗いてみるか、と階段の手前まで歩いていく。

よく見るとここも、開け放たれてはいるものの簡素な門になっている。

門の右側、ウイグル人の男が一人立っている。

ぼーっと立っているようなそぶりだが、立ち位置が立ち位置だけに門番かもしれない。

ただ、動く気配はないので門に向かってさらに進み、その男を素通りした、、、瞬間。

 

男がひゅっと、短く軽い口笛を吹いた。

恐らくこちらに向かって。

 

寒気がした。

恐らく警告だと思った。

何の警告かは分からない。

 

男から階段までは数歩。

今自分はあっさり階段の前にたどり着いて旧市街地を見渡せる場所にいる。

が、この階段は降りるべきではない、

そう思っていると中国人の公安の男が階段を登り切って現れ、横をすり抜けて門を出ていった。こちらには視線もくれなかった。

警備目的なら外国人の自分がこんなところにいて、怪しいとまで思わなくてもとりあえず視線くらいはこっちによこすんじゃないかとか、考えた。

 

素早く街全体を見渡した。

とても静かだが、何かの気配を隠している。そんな感じがする。

街の奥を見た、さっきの交差点で、現地人のおっさんに着いて北に進んでいた場合、

この街の一番深いところにたどり着いていたことはすぐ分かった。

 

何か起こる前に早くここを立ち去った方が良さそうだ。

 

この道をまっすぐ北へ登ればもうすぐウルムチ駅に着く。

そうすれば駅員に反対側に行く道を聞けばいい。

早く。

 

門番と思しき男は立ち位置を変えず同じ場所に立っていたようだが、視線を向けるのも怖かったので足早に横をすり抜けて、元の道に戻った。

 

ウルムチ駅に着く手前、細い歩道橋がかかっていて、駅の反対側、つまり東側へと歩いて行けるようだった。

ほっと一安心。

 

歩道橋を抜けて東側へ着くと、そこには串屋さんが。

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明日食べようと思っていたが、安心したらお腹が空いた。

ここで串を2、3本キメて招待所に帰ろう。

まだ緊張していたのか、味は覚えていない。