Neo Culture #Journal

Layered Little Press #Journal(旧Neo Culture)

小さすぎる出版社Layered Little Press(旧Neo Culture)

「あの日、ウイグル。」~謎の味噌ラーメン再現編~

トゥユクをほっつき歩いた後はそのまま鄯善まで運んでもらった。

鄯善は中国語読みでシャンシャン、ウイグル語ではピチャンという。

街の南部にクムタグ砂漠という大きな砂漠がある以外は特に何もない平凡な街。

 

そんな鄯善で出会った料理がこちら!!!!

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パンダ豆を使った!!味噌!ラー!メン! パクチーちょっと入り

 

 

この料理を食べたのは夜も20時くらいで辺りはもう真っ暗。

市場のへりに簡素な飲食店がテントを張って営業をしている屋台村のようなところに出くわしたが、

もちろん市場も時間が時間なので人気は全くなく、

テントのお店も店じまいの雰囲気でした。

そんな中でお腹が空いたのでどれか美味しそうな店はまだやっとらんかと探したわけですが、

一つ気になるお店を見つけたのでした。

店の前に玉ねぎとトマトとパンダ豆と、それにさらに何かを使って作ったであろう、ぼてっとした紅い塊。

それこそインドカレーでいうところのマサラのようなものを店の前にバケツに入れて鎮座させている店を見つけたのでした。

ただあまりに暗く、明かりも弱かったので正確な色やマサラの細部までは確認できず。。。

見た瞬間にこれは今までのウイグル料理とは一味も二味も違うなと思ってお店に入ったんですが、

店内にはメニューは無く、

ものすごく不愛想で不機嫌な顔したおばちゃんがのそのそとやった来て、

「で?」って黙って俺が注文を言うのを待っているので、

怖くなってとりあえず拉麺と言ってみたのでした。

最初あのマサラは拉麺になるんかどうかも分かっとらんかったんですが、店の前には大きな鍋にお湯は沸いていましたので、ラーメンかなと。

そしたらやってきたのがこいつだったのです。

写真もう一度。

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これはねー、いやマジ相当に意味不明ですよ。

まず肉をこんだけよく食べるウイグルにおいてメインとなる具材が豆のみ。

しかもその豆のチョイスがパンダ豆ですからね。渋すぎる。

麺は平麺細目で切り麺。かん水は不使用。卵も不使用。

そしてスープの部分がマジで謎。

作り方不明!

料理の名前も不明!

全てが謎に包まれた謎の味噌ラーメン。

味も香りも複雑で、いったい何がどう使われてこんな味になるのかさっぱり分かりません!!ただ発酵調味料の旨味、見た目で分かる食材は玉ねぎとパンダ豆とパクチー

外の紅いマサラと豆種と玉ねぎまで一致しており、若干のトマト味もするっちゃするように感じられるので、

外のマサラでこれを作っとることは間違いないと思うんですが。

そもそもあの紅い色も何由来なのか。謎が謎を呼ぶ事態。

しかし余りの美味しさに一息に飲み干してしまったのでした。

 

ちなみに気になったんならお店のおばちゃんに聞けばよかったじゃんっていう意見もあると思うんですが、

あの恐ろしいおばちゃんに、

英語は通じん、俺はウイグル語分からん、中国語も未熟、

という状況の中で閉店間際にあれこれと聞きに行ける勇気はなかったです。

一回言葉が通じんくて中国人にお店追い出されたこともあるんでw

 

しかしその後、

この味噌ラーメンが一体何だったのか頭から離れず、

この街でも次の街でも市場やスーパーに並べてある醤や調味料の類を全て片っ端から見て回り、裏の使用原材料を見て、

何をどう使ったらあれの味に近づきそうか、

脳内調理を繰り返したのでした。

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これはお酢なので全く関係ないですが、

それでも見落としがあるといけんのんでまじでスーパーの陳列棚の端から端までチェック。

 

あー醤油ね、そりゃ使うよね多分。

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そしてそう鮮醤油ですよね。

といった感じで、パズルのピースを1つずつ集めていく作業。

 

いわゆる五香。

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角煮やルーローハンのルーローの部分に使うような漢方パック的な奴です。

やー、でも豆を煮るのにこれはないか。

 

香辣でも麻辣でもなかったが、

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既製品には全材料が裏に書き込まれているので、もしかしたらこの中にヒントがあるやもしれぬ!

辣子、違う。

豆板醤、違う、、、と思う。発酵系の旨味があったんで何かしらの醤が使っちゃると思うけど、辛みは全くなかったし。

盐(塩)、まあ使うか。

鶏精、動物性の旨味は無かったと思うしなー。

番叶、、、キンマのことやろか???まあよく分からんけどなくてええわ。

八角などスパイス系はやっぱ違う。

白芷(ビャクシ)、、、というわけでこれも違うかな。

白酒、、、ウイグル料理って酒使うんやろか。でも豆料理には使わんやろうな。

 

というわけで醤以外の調味料はゆうても醤油と塩と砂糖くらいで、

やはり決め手は醤ということか。

しかし醤は結構色んな種類を見てきたけど、、、

問題はあの紅い色を出せる醤が一体何なのかというところだった。

ただマサラは紅かったが、出てきたラーメンそのものはむしろ濃ゆいみそ汁のような色だったので、

赤い色のマサラにさらに別の醤を足して調理するということか。。。

ん、となると紅い色が出る食材をマサラに使ってあれば、後から足す醤は別に紅くなくていいってことか。

 

じゃあ、紅い色が出そうな食材は。。。

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!!!!

紅腐乳!!!!!

じゃあこれで後は腐乳と相性のええ懐深い辛くない醤があれば大丈夫ということやな。

リーチや!!!!

 

ところがその後スーパーをいくら探しても適当な醤が全く見つからず、

調査は難航することになる。

なんせスーパーの醤を片っ端からひっくり返しても、辛いか海鮮系の旨味入りか肉料理用かばかりなで、

中国におる間にこの醤問題を解決することができなかったのだった。

 

ちなみにスーパーで写真撮りすぎて、

警備員からは止めろと注意され、

現地人のおばちゃんや店員さんたちからも不思議な目で見られたりしたのでした。

 

ところが帰国後に大久保の中華食材店でなんとあっさりといい醤が見つかってしまう。

別の用事で中国醤油を買いに行ったときのこと。

 

そういえばあの醤問題まだ解決しとらんかったなと思い出し、

端から醤コーナーの醤を手に取って裏をめくっていったのだった。

辛い、、、

辛い、、、

辛い、、、

激辛、、、

辛い、、、

激辛、、、

辛くないけど違う、、、

海鮮、、、

 

大豆味噌、砂糖、練りごま、腐乳、酵母エキス、大豆油、塩、生姜、乾燥ニンニク、

香辛料、、、腐乳!!!!!しかも辛くない!!!

腐乳入りの醤!!!!こんなものがあったとは!!!!

念のため他の醤も全部めくってみたが腐乳入りはこれだけで、

これならイケるんじゃないかと思いとりあえず買って帰った。

そして頭の中であの時の記憶を元に脳内調理を何度も繰り返し!

レシピを書き起こし、調整に調整を重ね!!

ついに再現できたのがこれ↓

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オリジナル↓

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「おおおおーーーーーーーーーーーーーー!

う、、、うめえ。

あの味がするううううううううううううううううううううううううううう。。。

むふうううううううううううううううううううう。。。」

 

ちょっと現物の方が紅みがかってはいる気がするが、

これは写真を撮った機材の違いや、光の度合いやいろいろあるのと、

腐乳の絶妙な配合具合というのがあるのかもしれない。(いや、そもそも消去法で紅腐乳にたどり着いただけで、これに紅腐乳が使われているとは誰も言っとらん爆)

 

味は少しオリジナルより甘くなってしまったが、およそ満足いく仕上がりだった。

多少の味の違いは食べている環境が圧倒的に違うのと、調理する場所の気候の差や、

細かいことまで突っ込むとパンダ豆の産地など、

誤差の要因は無数にありそれらすべてを消すことは不可能なので、

このくらいで良しとした。。

気候一つとってもなんせ現地はマイナス25度でしたので東京都はえらい違うわけです。

 

麺に関しては、

生麺、切り麺、かん水不使用、平麺、細目、卵不使用というすべての条件を満たし、

かつオリジナルのテクスチャーに近いものを持つ麺となれば、

生パスタしかないということで近くのお店に買いに走ったら生パスタのリングイネが置いてあったので即決。

ただ、生リングイネでほぼ完全再現に至ってしまったのでこれに関しては特に考察できないで今に至る。

というかウイグルでも麺はさんざん捏ねるとこも伸ばすとこも見せてもらってきたが、自分にはそれに関する知見が皆無なので、

自分で考察を挟む余地が残念ながらないのだった。

 

以上

再現レポートでした。