Neo Culture #Journal

Layered Little Press #Journal(旧Neo Culture)

小さすぎる出版社Layered Little Press(旧Neo Culture)

よしなしごと 1「鴨川」

はじめまして。以前ここで紹介していただいたAことあまにこと申します。

この度この場に、私の稚拙な文を晒す機会をいただきました。大変光栄なことです。

ですが私の投稿により、今まで築きあげられてきたこの場のリズムを、大幅に崩してしまうような気がしてヒヤヒヤしています。どうかあたたかく見守っていただければと思います。

 

せっかくの機会なので、何を書こうか迷いました。そしてすぐに、何か文章にできるようなネタは、通い慣れた京都のことくらいだということに気がつきました。

ですので今回、何度も訪れたことのある「鴨川」について書くことにします。





鴨川とは、京都を縦断する川のことです。

正確には、鴨川と表記されるのは今出川通より南。それより北はY字に枝分かれし、西に賀茂川、東に高野川が走ります。

 

その昔、豊臣秀吉が築いた、洛中と洛外を分けるための擁壁「御土居」の掘が鴨川の一部に使用されたり、河原で罪人の処刑が行われたりと、鴨川は京都の歴史の中で大きな位置を占めてきました。


現在では、川沿いの木々や遊歩道、ベンチが、鴨川を人々の生活の場たらしめています。ふと川へ目をやると、ランニングやランチ、読書、犬の散歩をしている人が見えます。

今回は鴨川で遭遇した、意外だと感じた使われ方をご紹介します。

 

 

 

  • 芸能活動は今でも

路上ライブや大道芸は、街ゆく人々の目を惹きます。私の知っている限り、それら

は駅前の広場で行われている印象です。

しかし、川がその会場となっているケースがあります。

四条河原町交差点から東にある、四条大橋の下では、以前大道芸の方が素晴らしい技を披露してくださいました。その日が春の休日、昼下がりだったこともあり、周りにはお昼を終えた若者たちがたくさん行き交っていました。

近くの土手に観客、橋の上からの観客、川の向こう側にも観客、この大道芸を鑑賞できる場が、大きく、広くありました。そういえば、中世のころ、河原での芸能活動が活発だったと聞いたことがあります。きっとその頃も、こんなようにさまざまな距離感を許容した芸能空間があったのだろうなと思いました。

 

  • 楽器の練習場・橋の下

夕方、鴨川の近くを通ると、天気の良い日には必ず楽器の音がどこからともなく聞こえてきます。

音の主はたいてい橋の下か、もしくはベンチのうえで、

楽器はトランペットやサックスなどの金管楽器からギターに至るまで。

演奏者も老若男女さまざまです。

川風に乗ってふわっと聞こえてくる音で、気分が良くなります。

  • 天然日サロ

とても天気の良い日のみに目にすることができる、夏季限定の天然日焼けサロン・かもがわ。

川沿いに設けられた、人一人が寝られる大きさのベンチの上で、日にあたって溶けているお父さまがいらっしゃいます。周りに遮るものがないので、日中の日当たりは抜群。お父さまの肌の色、私が見た回数などを考えると、きっと相当な常連さんなのだと思われます。

  • 夜会会場

鴨川夜会会場は、私も何度も使用させていただいております。夕方、学校の授業終わりごろから、夜会は鴨川沿いの至る所で開催されています。

野外でありながら雨天決行は確実。橋の下という素晴らしい環境を兼ね備えた会場は、コスパの良さではどの居酒屋にも劣ることはありません。

ただ一つ欠点なのは、蚊や毛虫に刺されることのみです。

 

  • 夜散歩

鴨川を利用するのは人に限った事ではありません。

ある夏の日、友人と夜会をしていたところ、川を鹿が通りかかりました。親子かな、と思うような体格差の2頭は、私たちなど気にも止めず、ヒタヒタと南下を続けてゆきます。鹿は夜行性ではないので、おそらく寝付けなかったとか、近所がうるさかったとか、いろんな理由があって散歩に繰り出したのでしょうか。そしてついにこんなところまで来てしまったのでしょうか。

鹿に気づいたとき、私たちは喋ることをやめて、彼らの徒渉を眺めていました。まるで屋久島を舞台とした、あのアニメ映画を見ている気分です。しばらく経って、親子が見えなくなった頃には、なんだか私は家に帰りたくなっていました。後で朝までその場にいた友人に聞くと、そのまま鹿が戻ってくることはなかったようで、私は南下を続けた彼らの行く末を案じました。

 

 

 

以上が私が意外だと思った川の使われ方でしたが、京都鴨川以外の生活密着型河川をよく知らないため、もしかすると今回この場をお借りしたにもかかわらず、全国的に見られる川の使われ方を列挙しただけかもしれません。使われ方に地域差があったら面白いですね。いろんな地域の川を見てみたいと思いました。