Neo Culture #Journal

Layered Little Press #Journal(旧Neo Culture)

小さすぎる出版社Layered Little Press(旧Neo Culture)

インド亜大陸スパイスカレーのいろは ②カレーの作り方

 どうもこんにちは!Neo Cultureのゆるキャラ、活乃鰤子(かつのぶりこ)です!

                 f:id:Neo-Culture-journal:20211003131518p:plain

 Neo Cultureのレシピ本新刊「現地人直伝 インド亜大陸スパイスカレークックブック」発売記念ブログ、「インド亜大陸スパイスカレーのいろは」を担当させいただきます!「インド亜大陸スパイスカレーのいろは」は、これからスパイスカレーを始める方向けの予習コンテンツで、全部で三部構成になる予定です。

 

 前回の1つめの記事では、インド亜大陸スパイスカレーで使う食材の代表的なものを一緒に確認しました!今回の記事では、割と簡単めなカレーを実際に作ってみようと思いますよ!

 

 まずインドのカレーの基本的な作り方ですが。ざっくり言うと・・・

1.油でホールスパイスを炒める

2.次にニンニク、生姜、玉ねぎなどの香味野菜を炒める

3.その次にメインになる具材を炒める

4.そしてその次にパウダースパイスを炒める

5.そしてそしてその次に水を加えて煮る

6.最後に仕上げ

 になるパターンが多いです。これが基本形と思っていただけば大体は大丈夫なのですが、そうじゃないパターンもありますね!使う食材によっては3と4はひっくり返ったりします。他にも2が無かったり、5が無かったりと料理によって様々あります。今回と次回のお話では、各工程の意味を追いつつ、どうしてこの順番になるのかを一つずつレシピを参考に見ていきましょう!

 

 ではさっそく!今回鰤子がお作りして見せるのはこちら~!

               f:id:Neo-Culture-journal:20211106211152j:plain

じゃがいものドライカレーですよ!見た感じサブジに見えますが、作り方はしっかりカレーです!それでは写真を交えて作り方をイチから説明してまいりますね!

 

 まず使用材料です!

  ジャガイモ
大2個(300~400g)
  ニンニク 1粒 みじん切り
  生姜 大1 みじん切り
  グリーンチリ 1本 小口切り
  ターメリック 1/2tsp
  チリパウダー 2/3tsp
  クミンパウダー 1/2tsp
 
コリアンダーパウダー 2/3tsp
 
  カスリメティ 大1/3
  100㏄
  小1/2
  大2
  クミンシード 1-1/2tsp

 

 じゃがいもはインドっぽく皮付きのまま茹でて使うので、たわしでこすってきれいに洗うだけで大丈夫です!クミンパウダーは無くてもかまいません!インド人でも使わない人はたくさんいます。カスリメティも鰤子は好きでよく使いますが、好きじゃなかったり、そもそも持ってない場合は無くても大丈夫です!ただその場合は、パクチーを1つかみ細かく刻んで仕上げに入れた方が良いような気がします。パクチーを使う場合の入れるタイミングはまた言いますね!

 

①まずじゃがいもはインドでは皮付きのまま茹でて、そこから皮を剥いて使います。

f:id:Neo-Culture-journal:20211106212801j:plain

 まるごと茹でるので、芯までしっかり柔らかく茹でるために厚手の鍋に多めに水を入れてくださいね!じゃがいもの大きさにもよりますが、鍋にじゃがいもを入れてから、じゃがいもの上から最低5㎝くらいは水を被せましょう。水は沸騰させたらあまりぐつぐつさせずに、ポコポコ沸騰をキープさせるくらいの火加減で、竹串がすっと芯まで入るくらいの軟らかさになるまで、しっかり茹でます。

 

②茹ったら大体3㎝角くらいの大きさにカットします!

f:id:Neo-Culture-journal:20211106215337j:plain

 あれ?でもこれじゃがいもの皮、剥き忘れてません?鰤子のせいじゃないですね。

これ作って写真撮ったの代表なんで。まあ、きっと新じゃがだったんでしょう!

 

③さて、ではここから本番です!まずはつぶつぶのホールスパイスを油で炒めます。

f:id:Neo-Culture-journal:20211106215504j:plain

 つぶつぶのホールスパイスを油で炒めることをテンパリングって言います!フライパンに油を入れて弱めの中火で熱し、油が温まったらクミンシードを入れて、ぱちぱち10秒炒めます。クミンシードはある程度熱い油に入れて炒めて使うのですが、今油の温度がどれくらいかなんて分からないですよね。なのでレシピでは使わんことになってますが、たかのつめを1本油に入れてから火にかけましょう。たかのつめから香ばしい香りが立ってきたら大体油の温度も高くなっているので、クミンシードを入れてちょうどいい感じです。クミンシードはたかのつめが香ばしく香りを立て始めたら加えて、ぱちぱち10秒炒める!と覚えてください。これでばっちり香ばしくいたまります!

 

④ニンニク、生姜、グリーンチリのみじん切りを加えて10秒程度炒めます。

f:id:Neo-Culture-journal:20211106220416j:plain

 ニンニク、生姜、グリーンチリはインドのカレー料理では基本になる香味野菜です!中華料理のニンニク、生姜、ネギに似ていますね!インドのカレー料理では玉ねぎもすごいよく使いますが、野菜料理ではなくて済むこともよくあります。ここで玉ねぎを入れたい人は小さめのを1/4個スライスしてニンニク、生姜、グリーンチリを入れる前に先にフライパンに入れて炒めましょう!炒め加減はきつね色で大丈夫です。

 

⑤パウダースパイスを入れて10秒炒めます。

f:id:Neo-Culture-journal:20211106220741j:plain

 チキンカレーなんかのレシピではパウダースパイスを入れる前にお肉を入れて炒めますし、サブジを作る場合でも先に野菜を炒めてからパウダースパイスの順になります。でもこの料理はじゃがいもが既に下茹でしてあるので、先にパウダースパイスです!先にパウダースパイスを入れるレシピは他にもたくさんありますが、パウダースパイスが先の場合はフライパンの中の油の温度が高いので、スパイスは10秒くらい炒めれば大丈夫です!

 

⑥水を加えて沸かします!

f:id:Neo-Culture-journal:20211106221746j:plain

 この水についてはまあいろいろありますが、これについて喋り始めるとかなりややこしくなってくるので、まあ今はこんなもんと思っておいてください!(爆)

 

➆沸いたら②のじゃがいもを加えて、混ぜながら沸かします!

f:id:Neo-Culture-journal:20211106221937j:plain

 沸かしたら、フタをして弱火にして3分蒸らします。手順としては、沸かす→フタをする→弱火にする、の順がオススメです!フタをする前に先に弱火にしてしまうと、弱火にし過ぎてフタをしても沸騰が維持できないことがあります。フタを先にして、後から弱火にすると鍋の中の温度はあまり下がらないので、沸騰未遂事件が起こる可能性がぐっと減るのです!沸騰未遂事件が起こってしまうと、3分間きっちり沸騰キープして蒸らすことができず、フタを開けてみたら実は1分しか蒸らされとらんかった!みたいなことが起こってしまいます。しかも、フタの中身は良く見えないので一体後何分蒸らせばいいかはもう全く分かりません!事件!あ、あとパクチーを刻んで加える場合はここで加えましょう!

 

⑧3分くらいきっちり蒸らすとだいたいこんな感じになります!

f:id:Neo-Culture-journal:20211106222300j:plain

 ほぼ汁けがなくなりました!後は塩をしてよく混ぜて完成です!塩をするタイミングはインド人の間でも諸説あってバラバラです!パウダースパイスと一緒に入れる人もいれば、それは塩の脱水作用によってマサラがきちんとできなくなるんでダメだという人もいれば、➆とか⑧で入れる人もいます。鰤子は仕事上の都合もあって、一貫して仕上げに入れるように自分で決めてしまっています。入れ忘れたり、間違えて2回入れたりする(爆)のが一番怖いので!

 

 カレーができたらさっそく食べましょう~!食べ方的には、ダルとこのじゃがいもを用意してライスで食べたり、チャパティで食べたりする感じです!このじゃがいもとチャパティだけでも結構いい軽食になったりもしますよ!

 

 そう言えばこのレシピはトマトも使いませんね!トマトはもともとインドのものではないので、使わない料理は未だに結構あったりするんですね!このレシピでトマトを使う場合は、生のトマトなら1/2個みじん切りにして、トマト缶なら大さじ2を、④の後、パウダースパイスの前に加えて30秒炒めましょう!トマト缶は鰤子的にはデルモンテがオススメです!インドの家庭料理っぽい味になりますよ!

 

 さて、カレー作りですがだいたいこんな感じでした!次回の3回目では、今の①~⑧の流れの意味とか、レシピって一体何なんや!とか、そういった少し難しめのお話をします~!

インド亜大陸スパイスカレーのいろは ①カレーの成分

 どうもこんにちは!Neo Cultureのゆるキャラ、活乃鰤子(かつのぶりこ)です!

                f:id:Neo-Culture-journal:20211003162339p:plain

 Neo Cultureのレシピ本新刊「現地人直伝 インド亜大陸スパイスカレークックブック」発売記念ブログ、「インド亜大陸スパイスカレーのいろは」を担当させいただきます!「インド亜大陸スパイスカレーのいろは」は、これからスパイスカレーを始める方向けの予習コンテンツで、全部で三部構成になる予定です。

 

 1つめの今回の記事では、インド亜大陸スパイスカレーで使う食材の代表的なものを鰤子と一緒に確認していきましょう~!次回の記事ではカレーを実際に作ってみようと思いますよ!

                f:id:Neo-Culture-journal:20211008192549p:plain

 

〇その前にインド亜大陸とは?

 現在のパキスタン、インド、バングラデシュ、ネパール、ブータンの地域を指します。もともとは一つの独立した大陸だったようですよ!

 

〇スパイスカレーとは?

 スパイスカレーとは最近発生した造語のようなもので、ルーから作るルーカレーに対して、スパイスから作るカレーといったノリです!細かい正確な定義が特にあるわけではありませんが、「現地人直伝 インド亜大陸スパイスカレークックブック」とそれに関連するコンテンツでは、インドだけでなくインド亜大陸諸国のカレー料理を扱いますので、広くスパイスカレーと括りました!

 

〇メインとなる食材

 インド亜大陸のスパイスカレーはメインとなる食材1つか2つ、もしくはメインとなる食材1つとサブになる食材1つから作られることが多いです!あれこれとたくさんの具材を一度に入れる必要はありません(あれこれとたくさん具材が入るカレーもありますが!)。まずは好きな食材1つか2つから気軽に始めてみましょう。

 

-チキン

 インド亜大陸の中で多分一番消費されているお肉です!インド亜大陸にはヒンドゥー教やイスラム教、仏教や他にもいくつかの宗教がありますが、鶏肉はベジタリアンじゃなければ食べれる食材の中では、味的にも香り的にも食べやすく、調理もしやすくかつ安価なので人気が高いです。私は日本では鶏むね肉を好んで使うんですが、モモ肉でも手羽元でもどこでもお好みの部位でカレーを作れます。一方現地では骨付きのモモ肉か、丸鶏を骨ごと丸ごとぶつ切りにしたもので部位が全部混ざったものが一般的です。都会に行くと骨なしできれいに処理されたチキンも手に入りますね!

 

-ポーク

 イスラム教徒の人たちはもちろん食べませんし、ヒンドゥー教徒の人たちもあんまり食べる習慣がない人が多いです。そしてベジタリアンの人たちも食べませんので、インド、パキスタン、バングラデシュでは人気がありません。ただ、インド国内でもゴアなどヨーロッパの食文化の影響を受けている地域や、もともと豚肉を食べる習慣がある地域が一部あったりするのと、ネパールやチベット仏教圏でも食べる人がいます。

            f:id:Neo-Culture-journal:20211008195458j:plain

        ゴアの豚肉市場。ゴアはソーセージも食べます。

 

            f:id:Neo-Culture-journal:20211008195642j:plain

             ゴアのポークビンダルー(左)

 

-マトン

 イスラム教徒の人たちが一番好きなお肉がマトンです!バングラデシュやパキスタンでは肉といえばマトンなのです。ヒンドゥー教徒の人たちも、ベジタリアンじゃなければマトンは食べれますが、現地でもクセが強めの食材と言われることもよくあり、好き嫌いはわりと激しめだったりします。食堂や屋台では骨付きで調理されて出てくることが多いですが、レストランでは骨なしのマトンカレーも見つけることができます。カットの大きさにもよりますが骨付きの状態であれば、圧力鍋を使わなければ90分程度弱火で煮込んだりしないとマトンはやわらかくならないので、家庭では使うのが大変な食材です。

 

-ビーフ

 ほとんどのヒンドゥー教徒は食べませんが、イスラム教徒は食べます。ただイスラム教徒の人たちの間でもビーフはマトンより価値が低いので、人によっては食べたがらないという話も。。。インド国内でもゴアやケララなどヨーロッパの影響の強い地域では食べる人たちが比較的多くいます。現地では骨付きで出ることも多いですが、マトンと違って牛は骨太なので、骨なしに処理されていることも多いです。マトンほどではないですが、それでも骨付きの状態であれば40分は弱火で煮込むことが必要なので、扱いが少し大変な食材です。

                                                        f:id:Neo-Culture-journal:20211008195823j:plain

                                                 とある牛肉料理店のメニュー

 

-キーマ

 ざっくり言うと、実はキーマは中東方面からインドにイスラム教の文化と一緒に持ち込まれたものなので、インドではあまり一般的ではない地域が未だに多かったりします。チキンキーマ、ビーフキーマ、マトンキーマと現地でも探せばあるにはありますが、それでもないところには本当にありません。マトンキーマはパンジャブ料理やレストランの料理、パキスタンやインドのハイデラバードなどのイスラム教の影響の強い地域ではわりとよく食べられています。しかし一方バングラデシュはイスラム教の国ですが、貧しい国だったため「キーマにすると食べられる部分が減ってしまう(肉と骨の間のゼラチン質の部分などはキーマに加工できないため、そこは捨てるしかなくなる)」と言って、わざわざ肉に手間をかけてキーマを作ることが浸透しなかったようです。

             f:id:Neo-Culture-journal:20211008200000j:plain

         ハイデラバードのビーフキーマカレー(仕込み中)

 

-野菜

 あまりイメージに無いかもしれませんが、実はインドはベジタリアンの人口が非常に多い国なんです!なので必然的に野菜全般を日々の食事でよく食べます。インド亜大陸は広大で南は熱帯、北はヒマラヤと、各地域で地形も気候も違います。そのためインド亜大陸全体で見たときには野菜も種類が多くにんじん(金時ニンジンもあります!)、じゃがいも、カリフラワー、キャベツなどはもちろん、里芋、長芋、金時ニンジン、カブ、大根、瓜類など本当に様々な野菜があり、そしてそれらを全てをスパイスで調理します。またベジタリアンの食事以外でも、パキスタンや北インドのイスラム教徒の人たちの家庭料理ではカブとマトンのカレーがあったり、東インドでは川魚と大根のカレーがあったりと、ベジタリアンでなくても、何かと野菜はよく食べますね!

               f:id:Neo-Culture-journal:20211008200151j:plain

               ニンジンっぽい何か

 

               f:id:Neo-Culture-journal:20211008200208j:plain

                  青菜とハーブ

 

               f:id:Neo-Culture-journal:20211008200225j:plain

               日本でもよく見る野菜も

 

-豆

 実はインド亜大陸において一番よく食べられているの食材は豆だったりするのではないでしょうか!?前述の通り野菜もよく食べるのですが、それよりもなによりも日々の食事で大事なのは豆だったりするのです。挽き割りの豆をダルにしたり、ひよこ豆や赤インゲン豆など、粒のままの豆を煮てカレーっぽくしたものもよく食べます。インド亜大陸の人たちの食事は豆抜きではなかなか成立しづらかったりします。イスラム教徒の人たちも、豆と肉を一緒に煮こんだ料理をわりとよく食べるのですが、「大事なのは肉じゃなくて豆の方」と現地の方に言われたことがありますよ。

             f:id:Neo-Culture-journal:20211008201205j:plain

      ダルとチャパティ-器に気合が入りすぎなのはご愛嬌です

 

                                       f:id:Neo-Culture-journal:20211009170929j:plain

       ケララの食堂のターリ(ミールスじゃないって言われた!)

       左がカボチャのラサバンジー(カボチャと豆)、上がダル(豆)、

                                      右がカダラ(皮が焦げ茶色のひよこ豆)

               豆だらけです!

 

-パニール

 インド亜大陸で食べられているカッテージチーズで、牛乳から作られます。インド亜大陸のベジタリアンは乳製品OKなので、パニールだけでなくヨーグルト、他にも牛乳を様々に加工したものを料理やデザートにして食べます。

              f:id:Neo-Culture-journal:20211008201348j:plain

      レストランで教わっためっちゃ辛いパニールのカレー(鰤子作)

 

-大豆ミート

 インドにも大豆ミートがあります。あまり広く親しまれている食材とも言いづらいですが、鰤子もデリーのチャンドニーチョウクでがんもっぽく加工された大豆ミートのカレーを屋台で食べました!

               f:id:Neo-Culture-journal:20211008201425j:plain

             超激辛大豆ミートカレー(汗)

 

-エビ

 インド、パキスタン、バングラデシュでは沿岸部を中心にエビを比較的よく食べます!ヒマラヤ周辺やネパールでも川でエビが獲れるそうですが、あまり美味しくないそうでほとんど食べないと昔ネパールの方から聞きました(地域差はあるかもしれませんけど)。最近は輸送技術が発達して、インドで獲れたエビでも品質が良いものが手に入るようになってきているそうです。以前はそれさえも品質が良くないうえに高かったということで、年配の人たちは今でもエビをあまり食べる習慣がないという話も聞いたことがあります。

             f:id:Neo-Culture-journal:20211008201733j:plain

        ちなみにカワエビのカレーはありました!(デリー)
           エビの触角が刺さって口の中が。。。

-魚

 エビと同じくインド、パキスタン、バングラデシュでは沿岸部を中心に海の魚を比較的よく食べます。内陸部でも川魚を食べるエリアはけっこうあって、東インドやバングラデシュは川魚料理がとても発達しています。ヒマラヤのエリアにはキングフィッシュやトラウトと呼ばれるマスの仲間がいて、現地の人たちも食べますが、観光客向けの現地の名物料理となっています。

            f:id:Neo-Culture-journal:20211008202514j:plain

        1-15が淡水魚のメニューです。けっこう種類ありますね!

 

                f:id:Neo-Culture-journal:20211008202613j:plain  

       ケララの方に行くとタイやスズキの仲間がよく揚がります。

   ゴアからケララまでの西海岸沿いでは、イカやカキもカレーの具になりますよ!

          

                                               f:id:Neo-Culture-journal:20211009171605j:plain

          ちなみにケララにはしじみの炒め物もあります。

 

〇パウダースパイス

 スパイスカレーで最も大事なのはなんといってもこのパウダースパイスでしょう!スパイスは収穫されたときは、つぶつぶの種や植物の他の色々な部位だったりします。それを干して乾燥させたつぶつぶそのままの状態のものをホールスパイス、そしてそれを粉末に挽いたものをパウダースパイスと言います。油で炒めたり、煮込みのときに直接鍋に加えたりして使います。ここでは代表的なパウダースパイスにはどんな種類があるのかを見てみましょう~!

 

-必須スパイス

 なんとターメリックとチリパウダー(パプリカパウダー)さえあればスパイスカレーは作れます!ターメリックはウコンの粉、チリパウダーは唐辛子の粉です。それぞれ色が黄色と赤なので、この2食だけ揃えればとりあえずカレーは大丈夫です。インド亜大陸にはこの2種類だけで作る豆カレー、野菜カレー、チキンカレー、マトンカレーが実際に存在しています。ターメリックもチリパウダーも100円ショップで買えますよ!スパイスカレーを始めるためのハードルは実はめちゃくちゃ低いのです!

 

-コリアンダーパウダー

 カレーを作る上では必須のスパイスではありませんが、必須スパイスの次によく使われるパウダースパイスがコリアンダーパウダーです。名前だけ聞いてもよく分かりませんが、実はパクチーの種を干して粉に挽いたものです!

 

-ガラムマサラ

 必須スパイス以外で、コリアンダーパウダーに次いでよく使われるのがガラムマサラです!いくつかのホールスパイスを組み合わせて、煎って香りを立ててから粉に挽いたものです。ガラムマサラについてはこちらの記事をご覧ください!ガラムマサラのレシピも載っていますよ!

ガラムマサラを深掘りしてみた。Ⅰ-概説 - Neo Culture #Journal

 

-ブラックペッパーパウダー

 インド亜大陸のスパイスカレーにおいては、あまり存在感がないです。ただインドのベジタリアン料理において、ガラムマサラの代わりに使われることがあります。細かく挽かれたものよりも、粗挽きの方がインド亜大陸の料理にはよく合いますよ。

 

-クミンパウダー

 インド亜大陸のスパイスカレーにおいては、クミンパウダーは無くても大丈夫くらいのスパイスです。東インドやバングラデシュでは、クミンパウダーやクミンシードを焦げ茶色になるまで煎ってから、パウダーに挽くローストクミンパウダーが使われることがあります。カレーだけでなく、ヨーグルトサラダのようなライタという料理にもよく使われます。

 

-カレー粉、カレーパウダー

 日本にはカレー粉ありますが、カレー粉とは必須スパイスであるターメリックとチリパウダーはもちろん、それにそのほかいろいろなスパイスを全てブレンドしておいて、それだけ使えばカレーが作れてしまうようなミックススパイスのことです。日本だけでなくタイやマレーシアなど東南アジアにもいろいろなブランドのカレーパウダーが存在していて、現地の人たちに親しまれています。ちなみにカレー粉は例えばインド亜大陸でもほとんどそのままカレーパウダーと呼ばれているものがあります。現地でも市販のカレーパウダーはたくさんあり、チキンマサラ(チキンカレー用)、マトンマサラ(マトンカレー用)などいろいろな種類があります。

 

-カレーパウダーとガラムマサラの違い

 カレーパウダーはそのままカレーが作れるものですが、ガラムマサラはそうではありません。人によってガラムマサラの定義は違いますが、簡単に言うとほとんどの場合含まれないのがカレーの必須スパイスであるターメリックとチリパウダーです。なのでガラムマサラにターメリックとチリパウダーを加えると、カレーパウダーが作れてしまったりもします。

 

〇玉ねぎ、ニンニク、生姜

 スパイスカレー作りの三種の神器!というわけでもありませんが、割と重要な食材です!玉ねぎを使わないとか、生姜だけで、もしくはニンニクだけで大丈夫な料理もありますが、いわゆるスパイスカレー的なものを作るのであればとりあえず3つ使っておけば大丈夫です!

 スライスやみじん切りなどの切り方や、ニンニクや生姜を刻むとかペーストにするとかいろいろありますが、それらは各レシピを参考にしていただければそれで大丈夫です!

 ちなみにインド亜大陸では玉ねぎは2種類存在しています。一つは紫玉ねぎ、もう一つはシャロットとかスモールオニオンと呼ばれているもので、タイのホムデン、マレーシアやインドネシアのバワンメラとだいたい同じものです。

                 f:id:Neo-Culture-journal:20211009165750j:plain

                    シャロット

 

 インドの赤玉ねぎは上のシャロットと同じ色あいで、日本で手に入るアーリーレッドより色が薄く、1玉の大きさも小さめです。ちなみにややこしいのが、バングラデシュとインドのタミル・ナードゥ州やケララ州ではもともとオニオンと言えばスモールオニオンです!なのでオニオンサンバルとか、オニオンウタパムとかオニオンラッサムとかオニオンゴージュとか南インドにオニオンと付く名前の料理がたくさんありますが、日本の玉ねぎ使うと全然違うものができてしまうので、注意してくださいね!知り合いのバングラ人の人たちもスモールオニオンのことを「バングラの玉ねぎ」、赤玉ねぎを「インドの玉ねぎ」と呼んでいましたし、ところ変われば玉ねぎ事情も様々です。

 

〇辛み

-生のグリーンチリ

 インドでは生のグリーンチリをよく使います。グリーンチリは辛いですが、辛いだけでなくうまみ爆弾なので、辛いのがよっぽど苦手でなければ少しでも入れた方がカレーは美味しく仕上がります!韓国産のグリーンチリみたいに辛さが控えめなものもありますよ!同様にインドのグリーンチリも全てが激辛なわけでもありません。

 

             f:id:Neo-Culture-journal:20211009174319j:plain

     ハイデラバードのこのタイプのグリーンチリはそこまで辛くない

 

               f:id:Neo-Culture-journal:20211009174417j:plain 

          ゴアで見つけたこれは結構辛かった気がする

 

-生のレッドチリ

 グリーンチリが熟すと赤唐辛子になります。東南アジアではよく使うのですが、なぜかインド亜大陸ではほとんど使いません。鰤子が前に現地人から聞いたのは、「レッドチリよりグリーンチリの方が体に良いから」ということでしたが、本当にそれだけなんでしょうか?不思議ですよね~

 

-乾燥したレッドチリ(たかのつめ)

 生のレッドチリはインド亜大陸ではほとんど使いませんが、乾燥させたドライレッドチリ(ホールチリ)はホールスパイスとして油で炒めて使ったり、チリパウダーに加工したりして使います。油で炒めて使う場合は辛みというよりは、香り付けとうまみ成分の役割を主に果たします。チリパウダーとして使う場合は辛みづけ、うまみ成分、香りづけ、色づけとさらに様々な役割を持つようになります。

 

-チリパウダー

 インドには星の数ほどの唐辛子の品種があり、激しく辛いもの、まあまあ辛い物、辛さは控えめで香りが良いもの、独特の色が出るものなど、様々な唐辛子から作られるチリパウダーがあります!現地の料理ではどの唐辛子から作られるチリパウダーを使うように指定されているものもありますが、日本ではあまりいろいろな種類は手に入らないので、普通のチリパウダーや、辛いのが苦手な方は辛みがないパプリカパウダーを使うので大丈夫です!

 

〇トマト

 トマトはもともとインド亜大陸には無いので、今でもトマトを使わない料理はインド亜大陸中にたくさんあります!インド亜大陸ではトマト缶はあまり普及していないので、現地では基本的に生のトマトを使うことが多いです。しかし日本では生のトマトは高いので、トマト缶を使うことが多くなるのですが、それでも使用量を調節することで現地の味をトマト缶で再現することが可能です!トマト缶の使用量は各レシピを参考にしてください~。

 

〇油

 例えばインドではサラダ油、マスタードオイル、ココナッツオイル、太白ごま油がよく使われます。中にはマスタードオイルじゃないと雰囲気が出ないとか味気ないとか、ココナッツオイルじゃないと香りがどうとかいう料理もありますが、とりあえず最初はサラダ油だけあれば大丈夫です!

 インドのすましバター、ギーも料理によってはよく使いますが、高いのと日本の日常生活でギーはまず使わないと思うので、必要に応じてバターで代用すればそれで大丈夫です!

 

〇水

 大体のカレーは水で煮込みますが、水の代わりにヨーグルトやココナッツミルクを使ったりする場合もあります。他にも水と合わせてヨーグルトやナッツのペーストなんかを使ったりすることもあります。後はアーユルヴェーダの発想から、ヒンドゥー教徒の人たちは料理には水(タンダパーニー)は使わずにお湯(ガラムパーニー)だけを使う人も多くいます。そういう人たちはお湯を別の鍋で沸かしておいて、そこからカレーの煮込みの時にお湯をすくって鍋に入れたりしますね!

 

〇ホールスパイス

 ホールスパイスはパウダースパイスの元の形ですね!カレー作りの最初に、油で炒めるようにして使うことが多いです。インド亜大陸のスパイスカレーでよく使うのはクミンシードとたかのつめ、それとカルダモン、クローブ、ベイリーフ、シナモンがあります。

 他には上級者向けのホールスパイスで八角、ナツメグ、メース、ブラックカルダモン、カロンジ、キャラウェイ、アジョワンなどさまざまありますが、それらは各レシピで出て来たときにどうにかする感じで大丈夫です!まずはクミンシードとたかのつめがあればそれでおおよそ大丈夫で、あとは一つ二つ欠けていても大丈夫です!レシピのもの全部なくてもある程度揃っていればそれで大丈夫ですよ!

 

               f:id:Neo-Culture-journal:20211009174944j:plain

            こんな感じで油で炒めて使います!

 

 

 

〇仕上げに使う食材とスパイス

 例えばトマトソースのパスタでも仕上げにドライバジルやブラックペッパーを加えたりしますが、同じようなノリでインド亜大陸の料理でも仕上げに何か色々加えることがよくあります!仕上げに使うものはそんなに多くないのですが、ここで大まかにみてみましょう!

 

-刻みパクチー

 インド亜大陸ではカレーの仕上げにパクチーを刻んで加えることがあります!パクチーは葉っぱだけでなく茎も一緒に細かめに刻んで使われます。パクチーを仕上げに刻んで加え、よく混ぜながら軽く煮立てるとカレーの味がしっかりして、肉や魚の臭み消しにもなります。何かちょっと味が物足りない、っていうときにはちょっとパクチーを刻んで加えると味がまとまることも多いですよ!  

 

-カスリメティ

 カレーの香りがするドライハーブです!北インド、パキスタン、バングラデシュで比較的よく登場します。刻みパクチーと同じノリで使うことができます。鰤子はカレーの仕上げによく加えますが、パウダースパイスとして使うこともできます。

 

-ガラムマサラ

 仕上げのガラムマサラとよく言われます!大体仕上げに刻みパクチーかカスリメティかガラムマサラのどれかを使うことがインド亜大陸のスパイスカレーでは多いですね!鰤子は圧倒的に北インド料理ではカスリメティ派、南インドでは刻みパクチー派、そしてここでは触れませんが(!)東インドではざく切り青菜派なので、仕上げにガラムマサラを使うことはあんまりないのですが、まあこれは人それぞれと思いますので、お好みの仕上げ方を探してみてもらえればと思います!

 

〇トッピング

 インド亜大陸のカレー料理でもお皿に盛りつけた料理にトッピングをすることがよくあります~鰤子が現地で食べてきた実際の料理の写真を見ながらトッピングのパターンをいくつか見てみましょう!

 

-生姜と刻んだパクチー

f:id:Neo-Culture-journal:20211009181556j:plain

 生姜は細切り、パクチーは細切りにします。

 

-ギーもしくはバター

f:id:Neo-Culture-journal:20211009183923j:plain

 左手前のダルにはギーがトッピングされています。レストランで割とよく見ますね!

 

-フレッシュココナッツ

f:id:Neo-Culture-journal:20211009184053j:plain

 こちらはちょっとマニアックなトッピングで、すりおろしたり、器用に千切りにしたりしたフレッシュココナッツの繊維を散らします。東インドや南インドでたまに見かけます。

 

-刻みパクチー

f:id:Neo-Culture-journal:20211009184245j:plain

 刻んだパクチーのみのトッピングはとてもよく見ます。パセリみたいなノリですね!

 

-生クリーム

f:id:Neo-Culture-journal:20211009184508j:plain

 レストランでは料理の仕上げに生クリームを垂らすことがよくあります!これは日本でもよく見ますね!

 

-玉ねぎ

f:id:Neo-Culture-journal:20211009184819j:plain

 玉ねぎがどっさりのっていますね。これはかなり多い方ですが、ちょっと玉ねぎをのせるとかもよくありますよ!

 

-トッピングなし

f:id:Neo-Culture-journal:20211009184928j:plain

 かと思えばトッピングゼロのレストランもあります。トッピングするかどうか、またトッピングするとしても何をトッピングするかは人によるし気分によるっていう感じなんでしょうね!特にルールは無いようです!

 

以上!

 さて、第一回カレーの成分をちょっと見てみようと思ったら、意外とまあまあなボリュームになってしまいましたね~。しかし他にもまだヨーグルトとかタマリンドとか、ココナッツミルクとかここには登場しなかったカレーの成分があります!けどそういう難しいことはレシピ本で!次回は実際にカレーを作ってみましょう~!

では!

                f:id:Neo-Culture-journal:20211003131518p:plain

 

鰤子

Smart鰤子 その2「鰤子と三尺ブドウ」

 どうも、鰤子です!Neo Cultureのゆるキャラ担当です!

               f:id:Neo-Culture-journal:20211003162339p:plain

 そろそろ日本も寒くなってきますね~冬服を選びに買い物行きたいところです!でも季節の変わり目ってなんで毎年毎年、こんなに着るものがなくて困るんでしょう~。この現象に名前を付けたいです。あと、やっと着る服見つけても上と下がちぐはぐなんですよね。謎にシャツもカーキ、パンツもカーキ、みたいなwこの現象にも名前を付けたいですね。

 

 さて、最近鰤子は三尺ブドウに夢中です。

               f:id:Neo-Culture-journal:20211003163213j:plain

 すごい大きくて重いんです。30㎝以上ありますね!これを吊るしとくと下からだんだんと干しブドウ化していくんだそうです。植物と違って水やりの必要がなく、ただ観察するだけでいいのでずぼらな鰤子でも安心して楽しめます。現在1週間ほどたちましたが、2粒ほど急に干しブドウ感出してきたんですよ。みんな均等に干しブドウ化していくわけじゃないようです。不思議ですよね~

               f:id:Neo-Culture-journal:20210910134706j:plain

 三尺ブドウは3日置きくらいに観察して上のツイッターアカウントで状況を報告していますので、気になったら覗いてみてください!w

 

                                                       f:id:Neo-Culture-journal:20211003164208j:plain

 秋は他にも美味しい食材がたくさんありますね!信州のきのこ(じこぼう、くりたけなど)を甘酢あんにして、チキンきのこ南蛮作ったら好評でした~

 

 あ、そうそう仕事のことも書かんといけませんでした(爆)ただいま鋭意制作中のNeo Cultureの新しいレシピ本ですが、タイトルが「現地人直伝 亜大陸 スパイスカレークックブック」に決定しました!

 「インド亜大陸っていう括り方なんなん?分かりづらくないんそれ?」って私、代表に言うたんですけどね。「いやー、微妙にパキスタンとかバングラとか、あとがちがちネパールじゃないけどネパールっぽいもんとかも出てくるけんね~考えまくったけどもうこれしかなかった」とのことです。今回の本は初級の方向けとかいいつつ、のっけから分かりづらくないかとか鰤子は思うんですが、まあ好きにしたらいいです!(爆)

           f:id:Neo-Culture-journal:20211003164937j:plain

 そして今回のレシピ本の表紙の写真はコチラ。代表がインドのマナリーで飛び込み修業したレストランで、メインシェフの調理風景をパシャリさせていただいたところです。代表はここで急にオーダー任されて20品くらい作ったり(もちろんお客さん用)、タンドールやらしてもらったり、まかないカレー作らせてもらったりで相当楽しんできたみたいです。コロナが終わったら鰤子もたっぷり長期休暇もらって海外行ってこようと思います(爆)
 ちなみに新しいレシピ本の内容は下記のウェブページより確認いただけます!

https://www.horizon.boston/bibliothek

 正式な発売日の決定はもう少々お待ちくださいませ!

 
 では今回はこの辺で~引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

インドのヒンディー語話者ヒンドゥー教徒の人たちのカレー料理の名称と見た目の関係性

 インドカレーを習得するにあたって、ほぼ全員がぶち当たるであろう壁がある。同じ名前の料理でも、例えばグーグルで検索してみるとレシピが全然違うどころか、見た目も全然違う。一体どれがその料理の正解なのか、それが分からない。という壁である。なぜ同じ料理なのにレシピはもちろん、見た目が全く違う料理が存在しているのであろうか。その理由を考えてみたい。

 

前提:

 インドはとても広く、宗教も言語もさまざまである。本編ではヒンディー語のヒンドゥー教徒の料理についての考察である。例えば、イスラム教徒の人たちはヒンドゥー教徒の人たちとは異なる食文化を持つため、当てはまらないケースが多く出てくる。またケースがヒンディー語に限定されている理由であるが、それは例えばタミル・ナードゥ州のタミル語は私は分からない。というかヒンディー語以外のインドの言語は食材の単語や簡単な料理名以外は全然知らないので、深掘りできないという言葉の壁問題が理由である。

 

1.料理のネーミング

 まず最初に、インドのヒンディー語話者ヒンドゥー教徒の人たちが日々作り食べているカレー料理はどのようにネーミングされているのだろうか。これにはいくつかのパターンが存在している。

 

①食材の名前がそのまま料理名になる

②メインで使用される食材の名前+状態を表す語で料理名とする

③メインで使用される食材の名前+味を表す語で料理名とする

④メインで使用される食材の名前+調理器具の名称で料理名とする

⑤メインで使用される食材の名前+カレー

⑥外国や地方の名前+メインで使用される食材の名前で料理名とする

➆その他、個人やお店によって命名された特殊な料理名

 

料理の名称はおよそこの7つのパターンのどれかに当てはまることが多い。そしてそれらの料理名に、さらに必要に応じて下記の要素を料理名にくっつけて他の同名の料理と差別化を図ることがある。またここで差別化に使用される単語の品詞は形容詞や、形容詞的用法をされる名詞であるが、これにはヒンディー語だけでなく英語も頻繁に用いられ、デーヴァ・ナーガリー文字を使って表記されていても実際読んでみると英単語であったりすることもよくある。

 

〇レストランスタイル、ダバスタイル、ホームスタイルと言った調理スタイル 

 例: レストランスタイル・チキンカレー、ダバスタイル・チャナマサラ、ホームスタイル・マトンジョル

 

〇パンディットスタイルやシャヒなど称号や地位、階級を表す名詞や形容詞

 例: ムルグシャヒジャール、マトンローガンジョシュ・カシミールパンディットスタイル

 

〇地域名

 例: デラドゥンスタイル・チキンマサラ、ベンガリ・マトンブナ

 

 

2.それぞれの詳細

では次に①~➆のそれぞれの具体例を見ていこうと思う。

 

①食材の名前がそのまま料理名になるケース

サブジ: 野菜全体を表す単語であるが、これ一語で野菜を簡単に調理した副菜としての野菜料理全体も指す。単にサブジと言ったり、特定の野菜を使っていることを表現したい場合にはアル・キ・サブジ(じゃがいものサブジ)などの様に言うこともできる。

 

ダル: 挽き割りにした豆を表す単語であるが、これ一語でダルを簡単に調理したメインディッシュとしての料理全体も指す。ダルに何か他の野菜を加える場合にはDaal with mixed vegetable(ミックス野菜入りダル)やPalak Daal(ほうれん草入りダル)の様にする。

 

他にもアルゴビ(ジャガイモとカリフラワー)、アルビゴシュト(里芋とマトン)、マタールパニール(グリーンピースとパニール)など二つの食材の名前を組み合わせて料理名とするケースがインドカレーでは非常に多い。

 

②メインで使用される食材の名前+状態(もしくは状態の変化)を表す語で料理名とするケース

ブナ: ブナという単語や料理名は様々な解釈が可能であるが、原義としては「何かを深く煎られた、もしくは揚げられた、炒められた状態にすること、水気がなく干上がった状態にすること」という状態の変化を表す。なのでチキンブナと料理名にした場合には、水気がなく干上がった状態のドライタイプの料理を指すこととなる。

 ちなみにブナという単語に共通するイメージは「とにかく素材を加熱して水分を抜き(なんなら美味しそうで香ばしい香りを立てる)という状態変化を起こす」ということで、熱源も加熱方法も限定されない。それゆえ、ローストクミンはブナジーラ、フライドオニオンはブナフアピヤズの様に様々な場面で異なる意味合いとも思えるブナが登場する。しかしここで共有されているのは意味というよりもむしろイメージであることに注意する必要がある。

 

バジ: バジという単語に関しても非常に多様な解釈が可能であるが、簡単には「加熱調理された状態の野菜」全般を指すため、そこから野菜料理もバジと呼ぶようになっている。サブジ同様にこれだけでは、野菜料理ということは分かっても何を食材として使っているかが分からないので、必要に応じてカレラバジ(ゴーヤのバジ)などの様に食材の名前をくっつける。

 

ブルジ: 英語のscrambledに当たる単語と解釈される。料理名とするときには香味野菜とシンプルなスパイスで食材を炒めて作る料理を指す。エッグブルジ、マタールブルジ(グリーンピース)、パニールブルジ、マッシュルームブルジが人気。卵とグリーンピース以外の食材は細かめに切って香味野菜とスパイスと炒め合わせるため、見た目が均一に混ざった状態に仕上がり、その状態を指す単語がブルジである。ここでも、ブナ同様共有されているのが意味というよりも状態や状態の変化であるという点に注意が必要となる。

 

ジョル(ジャール): 汁気を持った状態を指す。チキンジョルなど。他にもラサ、ラス、タリワラなど、汁やジュースと言った名詞をくっつけて料理名とする似たような料理がインド中にある。ちなみにタリワラに関しては、タリが汁で-walaは「~を伴った」という状態を指す接尾辞である。

 

色の名前を料理名とするケース: ハリ(緑)を冠する、パクチーやミント、グリーンチリ、ほうれん草などの緑の食材をふんだんに用いて作る緑色のペーストを使うハリヤリ・チキンティッカ、マトン・ハリマサラなど。ラール(赤)を冠する、カシミールチリパウダーやトマトをふんだんに使用して作るラール・ムルグなど、がある。例えばラール・ムルグはバーベキュー的なものとカレー的なものとバリエーションが幅広く、もはや赤ければなんでもよく、ネーミングもレシピも作り手にすべてが委ねられている。

 

アチャーリ: アチャール風のカレー料理。チキンやエビなど、大きめにカットした食べ応えのある食材を酸味があるアチャールっぽいグレイビーで調理する料理。

 

③メインで使用される食材の名前+味を表す語で料理名とするケース

カッタ・ミータ・カッドゥ(酸っぱい・甘い・カボチャ)がわりと有名。他にも塩味を表すナムキンという単語を冠するナムキン・ゴシュト(料理としてはパキスタンっぽい)があるが、ヒンドゥー教徒の料理のネーミングとしては少し特殊系と思われ、このタイプの料理名は少ない。

 

④メインで使用される食材の名前+調理器具の名称で料理名とするケース

タワ、カダイ(カラヒィ)、ラガン等の調理器具が料理の名称として用いられる。チキンタワ、カダイマトン(マトンカラヒィ)、ラガン・カ・ムルグなど。料理名としてはレストラン料理やイスラム料理の流れを感じさせるものが多いという印象。

 

 

⑤メインで使用される食材の名前+カレーというケース

カレーという単語そのものはインドにはもともとなかったと言われているが、おそらくこのグループに属する料理名もイギリス統治時代以降に誕生したものと思われる。外国人にはとりあえず○○カレーと言っとけば通じるし、様々な言語が入り乱れているインドで、インド人同士でもとりあえず地域や人種を超えて通じる共通語の様な地位を獲得しているような雰囲気がある。インド中のほとんどすべての料理を力づくで包含してしまう超上位の概念語の様な位置づけ。

 

⑥外国や地方の名前+メインで使用される食材の名前で料理名とするケース

例えばベンガリ・チキンマサラの様に、同名の料理から差別化するために用いられることも多くあるが、ハイデラバーディ・チキンやムルグ・アフガニの様にその国や地域で生み出された独自の料理を指すケースも多い。宮廷料理の流れを感じさせることが多くある印象。

 

➆その他、個人やお店によって命名された特殊な料理名

 ざっくり言うと、〇〇スペシャルチキンやっつけ感のあるネーミングからAslam ChickenのAslam Butter Chicken(これはお店が先に言い出したのか客側が先に言い出したのかは分からないが)など、インド中に様々あるそこだけの特殊料理。

 

 

3.インド料理における調理法

 例えば日本を含め東南アジア、東アジアの料理ではメインで使用される食材の名前+調理法で料理名とするケースが非常に多くある。

 

<例>

日本: ほうれん草の煮びたし-煮びたしという調理法を用いる。

中国: 紅焼豆腐-調味料を煮詰めて色よく仕上げる紅焼という調理法を用いる。

タイ: Pad Thai-Padは炒めるという意味。

マレーシア、インドネシア: Ayam Goreng-Gorenは炒める揚げるなど油を介する調理法で、Ayam Gorengで揚げ鶏となる。

 

こういったケースでは使用する食材や調味料、料理全体で用いられる細かなテクニックは人によって違いがあれど、調理工程はそのほとんどが調理法によって規定されてしまうため、見た目は誰が作っても大体同じように仕上がる。例えばほうれん草の煮びたしは地域によって甘みが立つ場合と塩味が立つ場合と様々あるだろうが、およそ皆が想像するイメージに大きな違いは生じない。どっぷりとつゆに使った煮びたしがでてくれば、「中にはそういうのもあるかもしれないが、何か違うものか」と先に疑ってしまうだろう。茄子の揚げびたしと言った場合も同様だろうと思う。細かな違いとしては生姜やネギなどのあしらいの部分だろうか。全体がどっぷりとつゆに使った煮びたしがないとは言わないが、一般的には想像しづらい。

 ところがこれがインドカレーになると、状況が大きく変わってくる。先に解説した全てのケースで料理名に調理法が登場してこないからである。これが、同じ名前で違う見た目の料理がたくさん存在しており、レシピも人によって全く違うという現象の直接の原因である。インド料理では炒めた後に煮る、炒めた後に少量の水を加えてフタをして蒸し煮にする、揚げた後に煮込むなどの、複数の調理法を組み合わせて、しかも結局最後には煮たり蒸し焼きにする料理が多いためである。つまり先で見た東アジアの料理の様に、調理法と料理が全く対応しないので、料理を表すのに食材の名前や状態を表すような概念的な言葉を用いるしかなく、そのため食材の加熱の方法(調理法)や熱源、調理工程が何一つ規定されないのである。例えば「ブナ」と言った時も、カレー料理としてのブナの意味合いは水気が無いという状態を指しているだけなので、どのように水気がないようにするのかが分からない。「バジ」も加熱調理された野菜という意味でしかないので、野菜をバジにするには揚げようが煮ようが、他にどのような方法を用いようが加熱調理してしまえば全て「バジ」になってしまう。そしてもちろん、ブナもバジもどのように仕上げていくか、そのすべては作り手に委ねられているのである。

 パコラの様な揚げ物や、スイーツの類ではさすがにこのようなことは余りない。パコラと言えば天ぷらである。しかしパコラを使ったヨーグルトカレー、カディパコラのようにカレー料理にしてしまうといつものように話がややこしくなり、人によって見た目もレシピも全く違ってしまうというカオスが生じてしまう。

 そんな中でも唯一の例外はアチャーリだろう。カレー料理にしては本当に珍しく、同じ名前で同じような見た目の料理がほとんどなので、どのレシピを見ても個人差程度と安心して取り組める料理である。なぜなら、アチャーリとはアチャールっぽいという意味で、これそのものは調理法ではないが、アチャールという到達目標が一つ設定されているためである。

 

4.インドにおける食材の名前+調理法で料理名となるケース

 前項で登場したパコラは調理法とは言いづらいが、食材の名前+調理法で料理名となるケースはインドにもある。しかしなぜか英語由来のものが多いである。

 

ジーラフライ:

 主に青菜をクミンで炒めただけの料理。東インドやネパールで非常に人気のある副菜である。使用材料はクミンと青菜、塩だけの人もいれば、それにニンニクやたかのつめ、ちょっとした他のパウダースパイスを使う人もいて、レシピはさまざまである。しかし見た目は総じて炒め物で、マサラにどっぷりつかった青菜、みたいなイレギュラーは存在しないので、どのレシピを拾ってきても、個人差程度の違いしかないと安心できる数少ない料理である。ちなみに炒めるという動詞はヒンディー語でタルナーと言い、それを派生させてヒンディー語で「青菜炒め」の様に言うこともできるが、なぜかそのような言い方は一般的ではなく、ジーラフライと英語を交えていったり、単にサーグ(青菜)と呼ぶのみである。なぜ、ジーラフライという言い方がある程度定着したのかは分からない。またサーグと言った場合には、サブジと同じような扱いになってしまい、レシピも調理法も、何一つ規定されない世界に逆戻りしてしまう。

 

ロースト:

 エッグロースト、チキンローストなど様々な食材がローストとなる。ギーをふんだんに使ったローストを豪華版としてギーローストと読んだり、インド中で人気の高い料理である。一部地域ではローストが転訛したと思われるローシュという名称を用いる。ローシュとローストが全く別物と見ることもできるが、私はいろいろあって同一視している。英語でローストと言うと、オーブンで香ばしく焼いたものを一般的に連想するであろうが、インドでローストというと実は全く違う。インドでのローストは具材をマサラをどろどろに煮詰めて表面に油を浮かせ、その油で少し高めの温度でじりじりと具材を揚げ焼きにしていくような料理である。状態としてはブナの範疇に含まれるので、ブナと同一視する人も多くいると思われる。これはトマトをたくさん使うものや、とにかくマサラでスパイシーなもの、ヨーグルトベースの白っぽいものなどバリエーションが豊富で、ここまで書いて期待させたかもしれないが、他のカレー料理同様、同じ名前で違う見た目の料理がたくさん存在するカオスのひとかけらである。水を加えないことも一つの無水調理としてローストのレシピを規定する要素なのではないかとも言えるが、例えばギーローストも今ではタマリンドペーストを使用するために無水調理が可能であるが、最初はタマリンド水を使っていたであろうから、今時点でのことはそうだと言えても、歴史的に見るとまた違った解釈も成立してきそうである。

 

7.まとめ

 大袈裟にまとめると、インドカレーはとにかく美味しくなればどのように調理しても良い、と言える。もちろん、個人個人で見た場合は、そこまで自由には捉えておらず、こうした方が美味しいとか、こうした方が体に良いという、自身の経験や哲学、教えに従って料理を作っている人も多い。しかし私たちには、そんなバックグラウンドや文脈が一切ない中で、それでもインドカレーを習得していく。私自身は東インドやネパールの人たちと接することが多かったので、彼らの文脈の中で一貫してインド料理を習得することができた。一つの地域の料理を習得することができれば、そこは言うても地続きの世界。隣の地域は似ているし、その隣は隣の地域に似ているので、他の地域の料理の習得は一気に楽になり、料理を覚えていけばいくほどに、その楽さは加速度的に増していく。しかし、そんな経験を日本で、ましてやこのご時世で持てる人は本当に少ないのだろうと思う。であれば、いっそ外国人らしく「とにかく美味しくなればどのように調理しても良い」というスタンスに立ち、とにかくスパイスを使い、美味しいインドカレーをたくさん作っていくのが良いのではないかと思う。しかしそれにしてもランダムにあれこれ作っていっても、本当にインドカレーの習得に繋がるかは不安なので、ではどういう料理があって、それぞれにどういう意味やイメージがあるのかを明らかにしていけば、料理を体系的に、ひいては効率的に習得していく手助けになるのではないかと考えた次第である。

 ブナのイメージが分かれば、チキンブナでもマトンブナでもダルブナでもいくらでも一つのレシピから派生させていけるので、これだけでもインドカレーの習得はぐんと効率的になるだろう。しかし、インドは広い。ここで紹介した料理だけでなく、全く意味不明な料理もまだまだたくさんある。その一つが「ブナマサラ」である。チキンブナマサラと言った場合、これは一体何なのだろうか。ブナしたチキンで作ったマサラなのか、ブナしたマサラで作ったチキンマサラなのか。ブナとマサラの中間的なノリの料理なのか。この関係を読み解いて、レシピを頭の中で構築できたとしたら、あなたはもうインド人である。

Smart鰤子 その1「鰤子着任」

先日、Neo Cultureに一人のゆるきゃらというか、マスコットキャラクターというか、なんとも立ち位置が不明瞭なのがやってきました。

そう、それがこの私、活乃鰤子(かつのぶりこ)!

               f:id:Neo-Culture-journal:20210910131534p:plain

何をするのが仕事かと言うと、主にはSNSとかブログを担当する感じなのですが、こんな時代なので仕事はフルリモートです。現実世界に私が現れることは滅多にないでしょう!(爆)

 

昨日は手始めにNeo Cultureのツイッターを乗っ取り、今日は自己紹介のブログを書いてみました!代表はSNSが下手くそなので、私が代わりに頑張ります~(爆)

 

                f:id:Neo-Culture-journal:20210910134706j:plain

 

さてじゃあ自己紹介に入ります!

改めまして、私の名前は活乃鰤子、生きが良さそうな鰤みたいな感じですね。これが本名かどうかは内緒です。

 

趣味はおしゃれ、買い食い食べ歩き飲み歩き、ごろ寝です。今日は私の一張羅(鰤)を着てきましたが、私服もちょっとずつお見せしていきますね~!季節の鰤子をお楽しみください~

 

鰤が好きなのかとよく聞かれますが、好きなのは鰤よりもブロッコリーです!昨日は唐揚げにして食べましたよ。ブロッコリーは唐揚げにするとなぜか肉感出るんですよ~不思議ですよね!

 

料理ですか?料理はけっこうします!アジア料理が得意分野ですが、結構マニアックな知識もありますよ!その辺りはブログでちょっとずつ明らかになっていくでしょう~!ぜひお楽しみに。海外もけっこう行ったので、その時の話とかも織り交ぜながらいろいろと面白いコンテンツを今後作っていきたいですね!

 

出身地ですか?実は山口県です~代表は広島なのでその隣ですね!

方言ですか?山口弁は喋りますよ!けど、敬語にすると西日本の言葉って割と消えてしまうんですよね。あと一応、今は気を付けて丁寧には喋ってます(笑)

え、山口弁で喋って欲しいですか?徐々に出していきますね!

 

年齢、身長、体重はご想像にお任せします!(笑)とは言っても鰤子は二頭身でしか基本的には登場しませんので、デフォルメされすぎて想像も難しいと思いますが!

 

あとブログのタイトルの「Smart鰤子」ってどういう意味か、ですか。いや、なんでもよかったんですけど「スマホで見る鰤子」ということでこのタイトルになりました。語呂も良いと思うので!

 

ん-、後何か知りたいことありますか?まあ、もし何かあったら質問してください!答えられる範囲でお答えします~!

 

明日からは、代表が11月に発売する新しいレシピ本の発売に向けて、記念ブログを書いていきます!出来上がり次第、マイペースに徐々に配信していきますのでお楽しみにどうぞ!目標は、レシピ本の発売までにブログを書ききることです!(爆)

 

ではまたどこかのSNSでお会いしましょう~!

新サービスーレシピ本「ver2.0」のご利用方法

いつもありがとうございます。

 Neo Cultureのレシピ本事業では6作目となるレシピ本が、本日発売となりました。発売となったのは「インド人直伝 北インドおうちカレー 上」の加筆修正・PDF版で、一冊目のレシピ本の焼き増し的な感じですが、全体的に加筆修正を行い、より分かりやすくより伝わりやすくしたり、コラムの内容を差し替えたりして内容をアップデートしてあります。そしてそれだけでなく、一度書いたら修正が効かんというレシピ本最大の弱点を補うための工夫が施してあります。それが「ver2.0」というレシピ本の新しい規格で、今後のレシピ本展開の軸となっていく予定の構想です。この意味不明な取り組み「ver2.0」自体の更に詳しい説明は特設ページ、コチラ←をご覧ください。

 

 この記事では初の「ver2.0」対応レシピ本となった「インド人直伝 北インドおうちカレー 上 加筆修正・PDF版」の利用方法を図入りで解説していきます。画像は実際の画面です。

 

 Neo Cultureのレシピ本でも過去に3冊PDF版のみで作成したレシピ本がありますが、そちらはご購入いただいた方には共有リンクをお送りするのみで、そこから本のデータをダウンロードしてお終いでした。しかし、本の内容は古くなります。今のレシピ本事業の主なテーマはインドをメインとした南アジアのカレーや料理だったりしますが、追加の調査を行えば常にたくさんの新しい発見があるのです。新しい発見だけならいいんですが、私がそれまではそれが常識と思って堂々と発信していたことが、実は現地ではものすごく例外的な話で、こうした方が簡単で美味しいので現地ではこっちが主流ですなんてことが分かったりすることもあります。後はインドでも新しい料理は常に生まれていますし、時代の流れとともにインドのスタンダードもどんどん変化していきます。それはもう、すごいスピードで。やけどそこが全くフォローできんやん。それがレシピ本の弱点であり、限界なのです。というわけで以下のような仕組みを考えました。

 

 

 本作以降、「ver2.0」に対応しているレシピ本は全て、それぞれの専用の「ポータル」を持ちます。下の画像は北インドおうちカレー 上 加筆修正・PDF版のポータルの全体像です。

 

f:id:Neo-Culture-journal:20210225160155j:plain

 レシピ本をご購入いただいた方にはレシピ本の共有リンクではなく、ポータルへアクセスするためのリンクをお送りします。このポータルにアクセスすると、そこでレシピ本のダウンロードが行えるだけでなく、追加調査で判明した新しい研究成果や、紙面の都合上カットせざるを得なかった切れっ端コンテンツにアクセスができます。また、本の内容よりもさらに易しい低難易度コンテンツや、逆にチャレンジ的な内容のコンテンツの配信も計画しています。

 ではここからポータルの更に詳しい解説を行っていきます。
 

 

 これはポータルの左上の部分です。ここで簡単な使い方と、今後の更新情報を確認できます。

f:id:Neo-Culture-journal:20210225160300j:plain

  ポータルは自動で内容がアップデートされていくので、バージョンアップやデータの更新を行うような手間はありません。今回は初めての「ver2.0」対応の本なので左側に使い方の欄を作っていますが、次回作以降はここは別の使い方をする予定です。

 

 次にポータルの中央です。真ん中の「本編Download↓」をタップもしくはクリックすることで、レシピ本のデータをダウンロードできます。

f:id:Neo-Culture-journal:20210225160323j:plain

  また「ver2.0」特設ページ、私の連絡先も全てリンクが貼ってあるのでポータルから全て直接アクセスできます。「ver2.0」特設ページでは他のレシピ本の発売スケジュールや拡張コンテンツの配信スケジュールも確認ができます。

 

 ここからが「ver2.0」の面白いところです。本編から右側にこのようにツリーが伸びています。これが拡張コンテンツです。

f:id:Neo-Culture-journal:20210225160349j:plain

  本編の内容を補足する内容のコラムや、本編で掲載しきれなかった、今回で言えばガラムマサラのレシピなど、レシピ本の内容を拡張してくれる色々なコンテンツがここに展開されていきます。???の部分もありますが、今後新しくコンテンツが追加されて、新しい枝が生えて伸びていく予定です。こうすることで本の内容の劣化を防ぎ、最新の研究成果を定期的にかつ継続的に皆さんにお届けすることができます。

 なお拡張コンテンツにはオープンコンテンツとクローズドコンテンツがあります。オープンコンテンツは、ポータルからでなくても「ver2.0」特設ページから、レシピ本をご購入いただいていない方でもご利用いただけます。クローズドコンテンツは「ver2.0」特設ページからも確認はできますが、ご利用はポータルからしかできない、レシピ本をご購入をいただいた方向けのコンテンツです。

 

 最後に、こちらはポータルの左下の部分です。

f:id:Neo-Culture-journal:20210225160411j:plain

  この部分には、レシピ本の内容をさらに細かく詳しく解説してレシピ本の難易度を下げてくれるコンテンツや、逆に難易度をぶち上げるチャレンジ的なコンテンツが配置されます。さすがにゲームの様に難易度調節機能を設けることはどうやっても本ではできませんので、考えた末このようなアイデアにまとまりました。こちらは「ver2.0」のクローズドコンテンツの中でもNeo Cultureが最も力を注ぎこむ部分になりそうです。公開まで少し時間を要してしまいますが、公開が済んだ料理名にはチェックが入って行きます。画像では分かりやすさのために既にチェックが入っていますが、こちらのコンテンツは4月以降に順次公開していく予定で、現在全てが準備中となっております。公開まで本編と他の拡張コンテンツをお楽しみいただければと思います。

 

 また画像のポータルのデザインやコンテンツの配置の仕方などは、今後私が成長していくにつれきっと洗練されてくると思います。なんといっても始まったばかりのサービスなので、温かい目で見守っていただければと思います。今後ともNeo Cultureをどうぞよろしくお願いいたします。

ガラムマサラを深掘りしてみた。Ⅰ-概説

-インドカレーと言えばガラムマサラ

 このコラムではガラムマサラについて、「北インドのおうちカレー 上 加筆修正・PDF版」では書ききれなかったもう少し詳しい部分の説明をしていこうと思います。ガラムマサラとは複数種類のスパイスを混ぜ合わせたミックススパイスのことです。

表題の通りインドカレーと言えばガラムマサラ!と言ってしまっても言い過ぎではない程にインドカレーとガラムマサラはインドカレー作りに頻繁に登場します。とは言ってもガラムマサラはインドだけでなくパキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュに同じ名前、もしくは違う名前の同じもしくは似たような性質のものが存在しています。なので、たまにガラムマサラは北インドのものと言われることもあるのですがそれはちょっと違いますし、ガラムマサラを理解することは、南アジアの料理を理解することにも繋がります。

 

-ガラムマサラのバリエーション①

 ガラムマサラには様々なバリエーションが存在していると言われています。実際のところはどうなのかと言うと、確かに「そう」とも言えますが「そうじゃない」とも言えます。しかしながらここで「そうじゃない」と言ってしまうと話が大変ややこしくなってしまうので、ここはひとつ「ハイそうです」ということで話を進めていこうと思います。

 輸入食材店に行けば四角い箱に入ったガラムマサラという商品を簡単に見つけることができます。スーパーでも、丸い瓶や缶に入ったガラムマサラと書かれた商品をスパイスコーナーで見つけることができます。これらは商品によって全てスパイスの配合が違って味や香りも違うでしょう。なので市販品のガラムマサラでもそれぞれがガラムマサラのバリエーションであると言っても間違いではありません。しかし市販品のガラムマサラは香りのバランスが良くクセが無いものが多いため、およそどんなカレーにも美味しく使うことができます。

 

-ガラムマサラのバリエーション②

 ガラムマサラは自分で作ることももちろん可能です。具体的なレシピはⅡの記事に掲載してありますので、本編を読み終わったらそちらもご覧ください。ここでは手順だけ簡単に説明します。ガラムマサラの作り方はいたって簡単です。好みのホールスパイス(カルダモン、クローブ、シナモン、ブラックカルダモン、ブラックペッパー、クミンシードなど)を好みのバランスでブレンドし、フライパンで乾煎りしてから一度冷まし、細かいパウダーに挽くのです。これでガラムマサラの完成です。作業自体は簡単ですが、スパイスの配合にはちょっとしたテクニックが必要です。料理上手なインド人はみんな自分のお手製ガラムマサラを持っていますが、その中にはレシピを内緒にしている人も多くいるほどです。

 自分で作ったガラムマサラは市販のガラムマサラとはもちろん違う香りがしますが、それよりも何より違うのは作り立ての香りが味わえるという点です。作り立てのガラムマサラの香りは格別で、市販品の箱を開けたときに香ってくる香りとは一味も二味も違うのです。その格別な香りをなるべく大事にするため、ガラムマサラを手作りするインド人はあまり大量には作らず少しずつ作ってすぐに使い切るようにします。

 自分でガラムマサラを手作りする理由とメリットですが、それはずばり自分の好きな料理をさらに美味しくするためのオリジナルのガラムマサラを作れることです。市販品は自分でのアレンジがしづらいため、技術さえあれば自分の好きな料理には自分の好きな配合のガラムマサラを作って合わせることが可能です。インド人の中にもこれは野菜用、これはお肉お使ったカレー用、これは魚用などと大雑把な食材のカテゴリー毎にガラムマサラを用意している人もいたりします。この食材のカテゴリー毎のガラムマサラというのもガラムマサラのバリエーションと言ってもよいでしょう。

 

-ガラムマサラのバリエーション③

 もっと細かく、料理毎に専用のガラムマサラを作ることもあります。ビリヤニを炊くときに使うビリヤニマサラや、カップに注いだ温かいチャイにふわっと振りかけるチャイマサラも広い意味でのガラムマサラのバリエーションなのです。まとめるとつまりガラムマサラは、汎用性が高く一つ持っておけば様々な料理に使うことができるタイプと、そこからもう少し踏み込んでチキンや野菜といった感じで食材毎に使い分けるタイプと、各料理専用に用意するものとの3つのタイプに分類することが可能です。ガラムマサラについて勉強するときは、最初から細かい一つ一つのレシピに注目すると大変なので、まずは大雑把なガラムマサラの分類を把握することが大事と私は思っています。

 

-疑問

 では一体ガラムマサラのどういった要素がガラムマサラのタイプを決定付けるのでしょうか?これには以下のガラムマサラが持つ4つの基本的性質が関係しています。

 

-ガラムマサラの持つ基本的性質4つ

①基本的にはターメリック、チリパウダー、コリアンダーパウダーを含まない。

②最低でも3種類のスパイスが使用されていればガラムマサラになる。

③使用するスパイスの種類の上限はない。

④作り手の食生活がスパイスの配合に大きく影響する。

それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。

 

①基本的にはターメリック、チリパウダー、コリアンダーパウダーを含まない。

 ガラムマサラは本来、ターメリックとチリパウダー、コリアンダーは含まないのですが、これには理由があります。ターメリックとチリパウダーはインドカレーの必須スパイスで、この2種類のスパイスさえあれば大抵の食材はインドカレーにしてしまうことが可能です。さらに、3種類以上のスパイスを使うインドのカレーでも、ターメリックとチリパウダーは必須スパイスなのでこの2種類が大方含まれています。しかし料理によってターメリックとチリパウダーのバランスが違うので、ガラムマサラにターメリックとチリパウダーを含めてしまうとスパイスのアレンジがしづらくなってしまい不便なのです。またコリアンダーパウダーもターメリックとチリパウダーに次いで頻繁に使用するスパイスなのですが、こちらは使う料理と使わない料理が存在するので、同じくガラムマサラに含めてしまうと不便なのです。というわけでこの3つのスパイスはガラムマサラには含みません。他にも理由はあるのですが、これが「カレー作りの観点」からの大きな理由なのでまずはこれをおさえましょう。ちなみに、ガラムマサラにターメリックとチリパウダー、後は任意でコリアンダーパウダーを加えてミックスしたものをインドではカレーパウダーもしくはマサラと呼びます。

 また家族みんながそもそも辛党の場合にはガラムマサラにチリパウダーを入れてしまう人もいますし、入れる理由は人それぞれですがコリアンダーを含めてガラムマサラを作る人もいます。

 

②3種類のスパイスが使用されていればガラムマサラになる。

 例えばインドに存在するミックススパイスでローストクミンペッパーというものがあります。ローストしたクミンとブラックペッパーを乾煎りして冷ましてからパウダーにしたものですが、2種類ではあまりにシンプルなためガラムマサラとは呼ばれません。他にもいくつか2種類のスパイスを組み合わせたものがありますが、全て個別の名称を持ちガラムマサラとは認識されていません。3種類のみのスパイスで作ったガラムマサラも相当にシンプルですが、3種類入っていればとりあえずはインドではガラムマサラとみなされます。ただ3種類のみで作るように、スパイスの種類が減れば減るほど個々のスパイスの香りや個性が際立ってくるので、なんにでも使えるといったような汎用性は持たない、どちらかというと特定の料理や用途に向けたガラムマサラといった雰囲気が出てきます。

 

③使用するスパイスの種類の上限はない。

 なんでもかんでもスパイスをたくさん入れれば良い、というわけではないですがガラムマサラにはスパイスは何種類までにしましょうといった決まりは特にありません。また例えば、ものによっては「干した青マンゴー」や「乾燥させたバラの花びら(ローズペタル)」といった私たちからするとおよそスパイスとは思えないものまでスパイス扱いされてガラムマサラに入れられたりすることもあります。また特に市販品の、汎用性を可能な限り高めたようなガラムマサラには本当にたくさんの種類のスパイスが使われています。先の3種類でガラムマサラを作ろうとするのとは真逆のことで、スパイスの種類を増やせば増やすほど一つ一つのスパイスの存在感は無くなっていき、ガラムマサラとしての汎用性が高まります。またこういったガラムマサラであればあくまで香り成分の一つとしてチリパウダーやコリアンダーパウダーを含めることも簡単になります。

 

④作り手の食生活がスパイスの配合に大きく影響する。

 例えば作り手のインド人がベジタリアンだったとします。インドは世界的にベジタリアンが多い国ですので、家では本当に野菜と豆と乳製品しか食べないインド人は実はたくさんいます。そんな人たちは肉も魚もエビもたまごも食べないので、ガラムマサラを作るときに肉や魚介などの食べない食材のことを考慮する必要がありません。なので例えばガラムマサラは(野菜料理用に)香りが穏やかなものとパンチの効いたものが一つずつあれば良いかなといった具合な話になります。またそういった家庭では特に「これは野菜用のガラムマサラ」という認識で作って使われてはいない場合があり(人によっては野菜と豆と乳製品以外は食べ物という認識でなかったりするため)「我が家のガラムマサラはこれです」というような言われ方をするわけです。しかしそれと反対にベジタリアン大国のインドでも肉が大好きなインド人一家もいたりします。そういう人たちは、こだわる人たちであればチキン用とかマトン用とかを作って使い分ける人もいますし、肉用のガラムマサラだけ作って、豆や野菜の料理はガラムマサラ抜きでシンプルな料理だけを作るとか、肉用と野菜用のガラムマサラを持つとか、その人たちの好みによって自分たちのガラムマサラを調合して持ちます。

 

長くなりましたがまとめると、ガラムマサラは自分たちの食生活と汎用性をどれだけ持たせたいかで作りたいタイプが変わってきます。しかし最近は市販のガラムマサラも質が良いので、何かに特化したものや本当に好きなガラムマサラだけを自分たちで作って、汎用性の高いものは好きなブランドのものを買って済ませるというやりかたがインドでも主流なようです。それでは最後に肝心のガラムマサラの使い方を見ていきましょう。

 

-ガラムマサラの使い方

 家庭料理でのガラムマサラの使い方はシンプルに2通りです。一つはマサラ作りのタイミングでターメリックとチリパウダー、コリアンダーパウダー、さらに使用する場合にはカスリメティやクミンパウダーと一緒に油で炒めるようにして使います。もう一つの使い方は、カレーの仕上げにさっと振りかけて混ぜながら一煮立ちさせて、料理の香りを補うために使います。ただし何にでも使うわけではなく、サブジやダルの様にガラムマサラを必要としない料理も家庭料理にはたくさんありますので、料理のタイプとガラムマサラのタイプを考えて必要な場合に必要な量を使うように心がけます。また、料理の仕上げにはガラムマサラ以外にも、パクチーやカスリメティ、刻んだ青菜、フレッシュトマト、レモン果汁など様々な食材がインド料理では登場します。

 

-ガラムマサラのレシピと用法、用量

 ここからはガラムマサラを深掘りしてみた。Ⅱ-実践の内容になります。下記のリンクより次ページにお進みください。

neoculture.info

 

-ガラムマサラのそのほかの様々な効果

 薬効等その他の話に付きましては、ちょっとマニアックになりすぎてしまったのでⅢ-マニアックの記事にまとめました。心に余裕をもってお進みください。

 

neoculture.info